Column

ボトムアップ方式で
在宅勤務を現場に根付かせる

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ドイツとの電話会議は自宅から参加
2015年11月、ボッシュ日本法人は在宅勤務制度を拡充し、勤務形態をさらに柔軟なものとした。導入時の利用申請者は100名程度だったが、順調に利用者が拡大、現在は400名超が利用申請している。人事部門人材開発グループの宮澤聡美氏はこう語る。「弊社の場合、ドイツ本社等の海外拠点との電話会議が時差の関係で夜スタートということもあるのですが、これまでは会社に残っていなければいけませんでした。最近ですと電話会議の日は17時には仕事を切り上げて帰宅し、家族で食事をしてお風呂に入った後で、仕事モードに入るという対応をする従業員社員もいると聞いています」。

bosh06宮澤氏は現在育児中で、子どもが急に熱を出した日は予め上司に相談し、翌朝も熱が下がらなければ在宅勤務にする。午前中は祖父母に看病を依頼し自宅で仕事を片付け、午後早々には看病に専念することができる。「通勤の負担がないのと勤務時間の前倒しができるのがとてもありがたいです」と在宅勤務の価値を実感する。また、2016年8月の関東地方への台風上陸の際には従業員全員に「明日は台風のため、在宅勤務が可能な人は在宅勤務にするなど柔軟に対応してください」とのメッセージが届いた。同グループのセクション・マネージャー千葉幸司氏は「安全最優先でかつ仕事もできる。在宅勤務は大変有意義な制度だと実感しています」と笑顔を見せる。

ボトムアップ方式のDiversity@bosch Japanが始動
自動車部品、産業機器から家電まで扱うボッシュ・グループは売上高706億ユーロ(約9.5兆円)、従業員数37万4778人のグローバル企業グループ。1906年にはいち早く8時間労働制を導入しており、当時からワーク・ライフ・バランスの尊重が従業員の生産効率を保持する最適な方法と位置付けている。日本法人でもバブル絶頂期の1980年代後半から1990年にかけて総労働時間の削減に力を入れ始め、一斉退社日や年次有給休暇の取得目標の設定を開始、現在も毎週金曜日を時短デーとし、工場も本社も定時を過ぎるとオフィスに人影はない。電気が消える。2012年にはダイバーシティに関する意識調査を国内で実施、そこで長時間残業の解消や在宅勤務制度の制度柔軟化、介護・育児サポート制度の周知徹底等が課題として明らかになった。人事部では課題解決に向けて制度(ハード)面での整備を行うと同時に、運用(ソフト)面では従業員主体によるボトムアップ方式の変革も必要と判断、有志の従業員を巻き込んで解決策を考える『アイデア出しワークショップ』が実施された。これを受け2014年1月には、実施手段を検討するプロジェクトDiversity@bosch Japanが始動、各部門混成メンバーによる「タイムマネジメント・チーム」「在宅勤務研究会・チーム」「育児介護両立サポートチーム」の3チームが活動を開始した。

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参加者の95%が「仕事の効率は同等か向上」と評価
bosh05「在宅勤務制度はそれまで傷病や育児・介護中の従業員向けの制度でしたが、『在宅勤務研究会・チーム』ではモバイルワーキングにまで概念を広げ、全従業員を対象により多様な働き方を実現することを目標に掲げました」と現職就任前に所属していた部署でチームに参加していた千葉氏。「在宅勤務研究会・チーム」は就業時間内に月当たり8時間程度を活動時間に当て、現行制度の問題点の抽出、外部情報の入手、提案内容の議論や調査、PR活動などに取り組んだ。「実際に先進的なIT系企業を数社訪問することで自分たちの立ち位置を確認でき、それに追いつくことをモチベーションに変えてきました」(千葉氏)。

2015年2月~3月には一般在宅勤務制度のトライアルを実施、各事業部、職種から50名強の従業員が参加した。実施後のアンケートでは参加者の83%、参加者の上司の75%が在宅勤務に「満足」と回答、また参加者の95%、参加者の上司の94%が在宅勤務によって仕事の効率が「オフィスと同じか向上した」と答えた。「サーバーが海外にあることによるネットワークスピードの遅延が課題となりましたが、チームメンバーだった情報システム部門の従業員が所属部門とかけ合って回線容量をアップし、本稼働時にはスムーズに使用できる状態になりました」と千葉氏はトライアルの意義を語る。

導入ハンドブックなどでソフトランディング
「在宅勤務研究会・チーム」はアンケート結果を全社で公表、2015年7月に最終案をまとめ役員会で報告した。役員会承認後、同8月の労働組合への説明会でもメンバーがプレゼンテーションを行った。「不安を感じる管理職の方には、『たとえばメンバーが週に1回、出張に行くことがあった場合、逐一行動を監視していますか?』といった形で納得してもらうようにしました」と千葉氏。管理職へのインタビューでは「導入によって管理の負担が増えるのは望まない」という意見があったことから、“月40時間まで”と“前日までに上司に連絡”という点以外は運用の要件を必要以上に細かく設定せず「なるべく縛りを多くしない」よう配慮した。トライアル実施者の実際の在宅勤務の利用パターンを例示したり、相互のコミュニケーションの取り方を解説したハンドブックを用意して社内SNSなどで共有するといった工夫も行った。システム面ではマイクロソフト社の「Skype for Business」を導入し、オンライン会議や行動管理を容易にしている。こうした草の根の活動が実を結び、利用者は順調に拡大している。
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さらに多くの従業員が仕事の生産性を高め、より強い組織に
「『在宅勤務研究会・チーム』では、メンバーチェンジの際に製造技術や生産技術サポートのメンバーも参加していましたが、これらの職種も工夫次第で在宅勤務の可能性はあると思います。今もチームメンバーだった者が主体となって自主的な勉強会を開催するなどして研究を続けており、今後は利用が難しいと考えられていた部署においても在宅勤務の利用者が増えると期待しています」と千葉氏。研究会のチームメンバー時は法務部所属だった千葉氏はその後人事部門に異動、プロジェクトへの参加が自身のキャリアを見直すきっかけにもなったと語る。チームは現在発展的に解消し、刷新されたメンバーで「ワークスタイル研究会・チーム」として生まれかわり、さらなる生産性向上に取り組んでいる。「既にボッシュにおいて在宅勤務は、従業員の様々なライフスタイルに合わせて活用されていますが、より多くの従業員が自らの業務を管理することに対して意識的になり、生産性を高めていくためのツールとして在宅勤務が活用されるよう目指しています」と千葉氏はさらなる進化への意欲を見せた。

 


プロフィール
bosh04ボッシュ株式会社
人事部門 人材開発グループ セクション・マネージャー
千葉幸司氏
略歴:
・1998年中央大学法学部国際企業関係法学科卒業
・同年ボッシュ株式会社入社、知的財産部配属
・2003年法務部 国際法務・ライセンスグループ
・2012年法務部 国内法務グループ 課長
・2016年人事部門人材開発グループセクション・マネージャー

ボッシュ株式会社
人事部門 人材開発グループ
宮澤聡美氏
略歴:
・2007年津田塾大学学芸学部卒業
同年米国にてインターンシップ
・2008年ボッシュ株式会社入社、人事部門 新卒採用グループ配属
・2011年人事部門人材開発

2016年10月21日