人生100年時代の働き方株式会社ロック・フィールド 管理本部 人事部 部長 西浦 真之氏

定年を65歳、定年後再雇用を70歳に。サラダの「匠」など意気盛んなシニア

一定基準を満たせば再雇用上限を75歳まで延長

兵庫県神戸市に本社を置き、サラダを中心としたそうざいの旗艦ブランド「RF1(アール・エフ・ワン)」や「神戸コロッケ」、和そうざいの「いとはん」などを展開する東証一部上場企業のロック・フィールド。設立は1972年で、社員数は2018年4月現在1,547名、東北から沖縄まで全国に店舗展開する。従来、同社の定年は60歳、定年後の再雇用上限年齢は65歳だったが、2018年5月からこれを定年65歳、定年後再雇用上限を70歳に段階的に引き上げることを決定した。さらに本人が希望し、一定の基準を満たす場合は満75歳を上限に再雇用する方針を明らかにした。人事制度改定のねらいを人事部部長の西浦真之氏に聞いた。

「従来60歳から65歳の間は1年ごとの契約社員としての再雇用でした。公的年金の受給年齢が段階的に引き上げられる中で、不安定な雇用環境ではなく、思い切って定年を引き延ばすことで社員は安心して働くことができるようになります。また、14年前に再雇用制度を導入して以来、約80名の方が定年を迎え、そのうち約95%が再雇用を希望し働いています。会社への高いロイヤリティがあることから、一気に定年を延長した方が良いと決断しました。さらには上限を70歳まで延長することで、近い将来の年金制度の改定に備えて安心感を持って働けるようになると思います」。

年齢ではなく問題解決能力+専門性で評価

再雇用契約の場合、収入面では従来、再雇用時の条件がそのまま上限年齢まで変わらない形だったが、改定を機にこれも変更する。過去1年間の成果に対して人事考課を行い、次年度の報酬を決定する。また、契約社員はこれまで賞与の支給対象には入らなかったが、今回から組み入れる形となった。
「シニアの方もしっかり頑張れば次年度の賞与に反映されるため、よりやりがいをもって働けるようになったという声を何人かの社員から聞いています」(西浦氏)

大阪湾を望む海岸沿いの敷地に建つ本社は安藤忠雄氏の設計

同社が人事制度を設計する際に重視するのが「専門性」だ。求められる成果を出すためにはベースとなる問題解決能力(コミュニケーション力や行動力など)とともに、領域ごとに異なる専門能力を発揮できるかが鍵になる。
「評価基準はあくまでも専門性を含めたその人の能力が対象で、社歴や年齢に関係なく能力がある者が評価されて上がっていく仕組みです。同じ年齢でもまったく給与水準が違うということがあります。当社はいわゆる役職定年はなく、定年後再雇用の場合の年収については役割に応じて個別に決めています。例えば、60歳を超えても定年前と変わらずに重要なポストを担う場合は定年前と同じ報酬で、60歳を機に一線から退いて後進を育成するという場合はそれに見合った報酬という形で柔軟に対応しています」(西浦氏)

サラダメニューなどを開発する3人の「匠」は揃って60代

ランチタイムには商品メニューでもあるサラダ付きの定食を堪能できる

2018年4月末時点でロック・フィールドの60歳以上の社員は39名で全体の2.6%に相当する。所属先や役割は部門長から最前線の実務部隊、一線を退き後進育成に当たる人など多方面に及ぶ。同社では人気のサラダメニューなどを自社開発しているが、ヒットメニュー

を開発する「匠」と呼ばれる社員は揃って60代である。
創業当時からさまざまな苦難を会社とともにしてきた社員も多い。それだけに自分たちが会社を牽引してきて、これからもしっかり次代にバトンを渡していきたいという思いを持つシニアが少なくない。
「みなさん気持ちが若く、まったく年齢を感じさせませんし、何より会社への共感性が強いという部分で一致しています。だから当社で働き続けることに対して何か誇りのようなものを持っている社員が非常に多いというのが私の実感です」(西浦氏)

1日5時間勤務や週休4日も可能な働き方

海が見渡せる空間でシニアと若手がきさくに語り合う従業員レストラン

2018年5月の制度改定では介護や育児などに当たる社員のニーズに応じて、勤務地や勤務時間を柔軟に選択できる制度も取り入れている。新たに「リージョナル正社員」という身分を設け、原則として転居を伴う転勤はなし、勤務時間は週20時間から週40時間以内での選択を可能とした。定年後再雇用されたシニアについても、従来は「労働時間1日8時間、週5日」と決まっていたが、リージョナル正社員同様にこの制度が適用される形となった。例えば1日を5時間にして5日間働くというパターンや1日8時間で週休4日も可能となる。
「シニアの場合、最大75歳まで働くことが可能になりましたが、65歳からは年金をもらいながら働くことができます。その場合、少しスローダウンして年金だけでは足りない分だけ働きたいという人もいれば、元気なうちはバリバリ働きたいという人もいると思います。このような就労ニーズの多様化に柔軟に対応できるような制度にしました」(西浦氏)

40年目に10日間の特別休暇。人生後半を見つめなおす機会に

ロック・フィールドでは入社10年、20年、30年のタイミングでリフレッシュ休暇制度があるが、今回の定年延長を機に40年目の人には10日間の特別休暇を付与することを決めた。これは永年勤続表彰という部分と、定年を前にマインドリセットをしてもらい、ゆっくり自分の人生を見つめてもらいたいという意図がある。人生100年時代の生きがいについて西浦氏は、「世代によって異なり、定義づけるのは意味がない」と前置きしながらも次のように語る。
「どういうスタンスで生きていくにせよ、やはり仕事というものを通じていかに自己実現できるかというのが職業人生の鍵であるし、生きがいにつながると思います。人事としてはいかに仕事を通じて自分の達成感が得られるような仕掛けやマネジメントを用意できるかが重要だと考えています」。
「リージョナル正社員」や、定年後再雇用の「シニアエキスパート」など働き方が多様化していく中で、今後はマネジメントの精度がより問われるようになる。
「従業員個々の立場を受け入れた上で、永遠にマネジメントの質を磨き上げていくことが求められていると思います」と西浦氏は今後への決意を語った。

プロフィール

西浦 真之氏
株式会社ロック・フィールド
管理本部 人事部 部長
略歴:
1992年 立命館大学卒業
1992年 ロック・フィールドに入社
店長、スーパーバイザーなどを経験
2005年 販売本部 西日本採用教育サポートグループ グループ長
2012年 管理本部 人事部 部長。現在に至る