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リクルートワークス研究所
 

「機会損失」は、自社の営業組織自らが起こしている

ブレインワークス 代表取締役社長 兼 COO
桜井富美男


2001 年 4月 10 日

”素人であっても倍売れる”

 当社の事業内容のひとつに、成功報酬型の営業コンサルティングがある。3、4カ月という限られた期間のなか、依頼企業の営業組織の営業同行や組織マネジメント代行を行いながら、実務を通して収益を倍化させている。いわゆる、世間一般で認識されているコンサルティングや研修とはまったく異質な取り組みである。当社のコンサルティングはあくまでもE成果F、すなわち数字を上げるためのものであるので、依頼企業との契約も成功報酬型の契約となる。

 実際に成果が上がれば、成果の上がったセールスモデルをもとに依頼組織・企業に必要な営業体系やツール等をそこからさらにつくりあげていく。成果の上がった手法・ノウハウツールであるため、現場からは信頼され影響力がある。企業内の他の営業組織に対しても結果を水平展開しやすいということも、この成功報酬型営業コンサルティングの特徴といえるだろう。

 この方法で、約束した営業目標の倍以上の数字を上げ、投資していただいた金額の平均で約6倍の収益を依頼企業にお返ししている。

 つまり、“その企業・業界の素人であっても倍売れる”のである。  では、このような成果を上げる営業組織をつくるにはどうすればいいか?


営業自らが機会損失を起こす

 まず、経営や人事が、「顧客の視点」から営業組織の人材を見直していくことが重要である。

 売り上げが上がらない組織に共通する問題点を考えてみると、(1)売り急ぐあまり、自社のみの立場・都合優先で営業を行っている、(2)営業組織の当事者たちが、過去の慣習・常識にとらわれすぎている(=既存の商品・サービスにしがみつく)――という2点につきる。「顧客接点における機会損失(チャンスロス)は自社の営業組織自らが起こしている」のである。

 しかしこのことは、企業において人材に携わっている方であればすでに十分実感されているはずであろう。気づいてはいても、「スタッフは現場の具体的な戦術等は現場に任せざるを得ない」「ラインはスタッフの総論や素人意見などは聞かない」というスタッフとラインとの「暗黙の壁」があり、上記の問題点が何も解消されないまま、日々営業活動が行われているのである。そして当然、業績は思うように上がらず、企業としては悶々とした状態が続く。

 この「暗黙の壁」を外部の力を借りて叩き壊し、そこから強い組織を再構築するということに、各社取り組み始めている。その際、短期間で変革を行い一気に業績を上げるため、当社のような存在が現在重宝がられているのだと感じている。しかし、もし多少の時間がかかってもよいのなら、自社で成果が上がるような組織に再構築することは重要であり可能である。

 まず、「暗黙の壁」を壊す方法だが、実はシンプルであって、「顧客の視点」でのみ商品・サービスを考えて営業コンサルティング(営業行為含む)に臨むという、ただそれだけなのである。 「顧客の視点」でさえ考えられる人材なら、誰でも今より売れる。そして、この視点を強くもって顧客に向かえるポテンシャルの高い人材をピックアップし、彼らに集中して重要な営業ミッションを与え、スキル育成プログラム等も併せて受けさせることで、飛躍的に業績は上がる。我々はこの考えにもとづき、短期的に業績を2〜3倍増にしている。


「姿勢」と「基本能力」


 顧客の視点でサービスを考えられる可能性の高い人材とは誰か。

 我々は依頼企業にコンサルティングを行う際、事前に対象となる営業メンバー全員に面談を行う。面談では、今までの営業成績等は一切関係なく(実際にその人の営業成績を私は事前には見ません)、我々が顧客の立場に立って営業担当から営業を受けてみる、という面談である(ロールプレイング)。

 ロールプレイングの評点の高い営業メンバーこそが、他の人間より顧客の視点で物事を考えられる人物と規定し、約5分の営業ロールプレイングと5分の個別面談の計10分で、アセスメントを行う。  面談する側は、あくまでも顧客の視点・立場になりきって、その人間の営業を受けることが大切である。評点として見るポイントは、大きく分けて「姿勢」と「基本能力」の2つである(図表1参照)。 「姿勢」とは、(1)前向きさ、(2)改善意欲、(3)素直さであり、「基本能力」とは、(1)本質理解力、(2)学習能力である。特に業績が飛躍的に上がる営業に必要な要素は、「姿勢」の各ポイントにあると考えている。ポイントが低いと、新しいことや難易度の高いものへのチャレンジ意欲が希薄になり、行動しなくなる傾向が強く、売れないことの言い訳をするようになる。つまり、固定概念に縛られがちな人間と推測する。例えば、人の話、顧客の話を素直に聞けない人の素直さは0点である。次に、「基本能力」として、顧客の真の要望・課題をつかむために必要な本質理解力、そして顧客の課題を自社の商品・サービスを通して解決しようとする能力として学習能力を見る。

 評点は各項目とも3〜0点でつける(優・良・可・不可)。5項目の合計点で8点〜10点あたりが選別ラインとなる(ただし、1項目でも0点がある場合は対象外とする)。

 ロールプレイングは極力短く行うことが肝要だ。一瞬で顧客の信頼を勝ち得られない人物はこの大競争時代、それだけで敗北する可能性がある。

 営業担当を判断するには営業場面を見ることである。そしてそれは、ロールプレイングで十分代替可能である。このロールプレイングで、もし、面談者が不快感や違和感を覚えたとしたら、顧客の声なき不満は“爆発寸前”だと思ったほうがよいであろう。

 ロールプレイング等を実行し、まず、「顧客の視点に立てる営業」はどれくらい組織にいるのかを見てみる。実際に営業経験がなくても、「顧客の視点」に立つことはできる。その現実の上で、経営戦略実現に必要な人員配置、育成等の計画を立案することをお勧めする。


図表1 ロールプレイングにおけるアセスメントのポイント
プロフィール 姿勢 基本能力
コメント
+・-・課題等
支店 氏名 年齢














東京 S氏 40 0 0 1 1 0 2 第一印象は物腰柔らかく、悪い印象はしない。しかし、そこどまり。■千葉周辺の契約社員の引き継ぎ。××の後任。■12月からリーダーから一社員になることになった。何とか頑張ろうと口で言っているが、本心で思っているのか疑問。■目が疑心暗鬼になっている。その場しのぎの口先社員。どうも信頼感に欠ける。■持って回った表現が多いのは自信のなさ、成功体験の少なさ。自分で何かを成し遂げたことがない。■気はやさしいのはよいのだが、それだけではこれからの組織では何の役にも立たない。自覚はしているのだろうが、行動が伴わない。■改善意欲や学習意欲が希薄。自己成長が見込めない。正直かなり厳しいのが実態。■何とかなるだろうというモラトリアム人間。ものぐさであろう。自覚して行動に移すのにかなりの労力が伴う。
大阪 N氏 28 1 0 2 1 1 5 ■若くて素直なセールス。人には嫌われない。ただし、平均的で、売れるために必要なこだわりや、押しの強さが感じられないので、売り上げはなかなか上がりにくいと思う。■本人は、別の営業もしてみたい気持ちあり。転職するのかなと漠然と思っている。しかし、現状に流されているのが実態。■まだ、本人自身に若手であるという意識があり、それに甘えているところが見え隠れする。今から意識を変えていかないと今後の成長を阻害することになる恐れはある。
東京 F氏 27 3 2 3 2 2 12 ■前向きな性格で熱意も感じる。好青年。■ハキハキした物言いは好印象を相手に与える。■××を担当することでチャンスに感じている。■逸材である。売れる営業となる素養は大いにある。■学習意欲も高く、自己成長の意欲も高い。■アグレッシブな言動が大いに期待をもたせる。■しかし、スキル的にはまだまだ幼稚で心もとないので、基本スキルの徹底を行い基盤をしっかりつくらせること。■高い要望を常に出しつづけて、引っ張り上げてほしいし、また、その期待に十分こたえられるハートはもっている。
東京 M氏 37 0 0 0 0 0 0 ■非常に引っ込み思案の印象を受ける。居心地が悪い。話が長い。■典型的な現実逃避型人間。考えるが、具体的な行動から逃げる。何もやらない。■踏ん切りがつかないタイプ。かなり時間がかかる。
大阪 D氏 26 3 3 2 2 2 12 ■今の仕事は非常に面白く、充実している。■また仕事の工夫を積極的に行っている。■やや思い込み先行で、饒舌になりすぎるところは直したほうが売れる。スキルの問題。■視点はいいが、もっと高く、幅広い視点をもつように指導しなければいけない。一生懸命のあまり、視野狭窄になることもある。■ポテンシャルも高く、意欲も高いこの人材を生かすことは、組織にとって大命題。スキルはまだまだ幼いので、ここのところをしっかり指導・マネジメントしてほしい。
注 : 外資系企業A社での事前面談の一部。1人10分でコメントまで記入。
出所 : 桜井富美男 作成


桜井富美男(さくらい・ふみお)
1984年慶應義塾大学法学部卒業後、リクルート入社。92年リー
ドエグジビション・ジャパンに転職、セールスプロモーション活動
の責任者を経て、94年、営業・制作の統括責任者として横浜リク
ルートに転職。99年4月ブレインワークス代表取締役副社長に就
任。企業の営業コンサルティング、戦略的アウトソーシングの請
負、リクルーティングコンサルティング等、成果直結型セールス
プロモーション主体のコンサルティング事業に注力する。2000年
4月より現職。 ブレインワークス http://www.bwks.co.jp/

『Works No.45「顧客接点」のマネジメント』(2001年4月発行)掲載

 
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