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リクルートワークス研究所
 

『転職サイクル』から探るマッチングの実態

ワークス研究所 主幹研究員
角方正幸

ワークス研究所 研究員
白石久喜


2001 年 2月 10 日

ワーキングパーソンの就業実態調査について

 ワークス研究所では2000年秋に、「ワーキングパーソンの就業実態調査」として首都圏の働く人々約1万3000人(男性8000人、女性5000人)を対象に働く個人の就業に関する実態と意識の調査を行った。同種の調査は、男性正規社員・正規職員(以下、正規社員と表記)を対象とした「首都圏ビジネスマンの転職実態調査」や働く女性を対象とした「ワーキングウーマン調査」など、対象を限定した個別の調査は過去存在したが、今回は働く個人全体を俯瞰するという目的で男女を問わず就業形態も正規社員のみならず、契約社員、派遣スタッフ、パートタイマー、フリーター(社会人アルバイター)まで拡大した。大規模調査ゆえ詳細な分析は現在進行中である。したがって今回は、結果の概要をかいつまんでの報告とさせていただく。本稿で、平均的就業者像をイメージしていただければ幸いである。
  今回の「ワーキングパーソン調査」の主目的は、働く個人(ワーキングパーソン)の考える望ましい働き方に始まり、離職から転職活動を経て、入職へつながる転職者のE転職サイクルF(図表1)の実態を把握することである。この転職サイクルを総合的・包括的に捉えることのできる調査は過去に類を見ず、本調査は大変貴重なデータであると自負している。


図表1 ワーキングパーソン転職サイクル

ワーキングパーソンの4割が転職を希望

 首都圏のワーキングパーソンの51.9%が「専門的働き方」を希望し、54.1%は自分の雇用に対して不安を持っている。雇用への不安は年代別には30代に強く現れており、加齢にしたがって減少する(図表2)。しかし自らの雇用に不安を感じている一方で、知識やスキルを身につけたり、資格の取得のために学んでいる人は16.4%で、必ずしも多くない。労働市場における自分の価値を高めたい気持ちは薄ぼんやりとあるのだろうが、実際に行動できているワーキングパーソンはあまりいないようだ。
  雇用不安を持つ者が5割を占め、同一企業での長期安定就業が難しくなってきたワーキングパーソンは転職についてはどのように考えているのか見てみよう。
  「転職意向あり」との回答をしている人は39.9%で、その理由としては「賃金水準に不満」が最も高く35.1%、次いで「勤務先の将来に不安」が31.9%であった。雇用への不安から、より安定した勤務先を探したい気持ちの現れであろう。
  他方、転職の意向を阻害する要因として挙げられているのは「募集求人の年齢制限」が40.8%、次いで「今の仕事の経験が世間で通用しにくい」が23.4%となっている。転職上限年齢34歳とよく言われるが、実際年齢制限は大きな壁となっている様がうかがえる。

図表2 年齢層別雇用不安の有無 (全体/単一回答、単位:%)
雇用不安を持っている・計
雇用不安を持っていない・計
全体
54.1
45.4
18〜24歳
51.5
48.1
25〜29歳
55.5
44.0
30〜34歳
58.7
40.9
35〜39歳
58.7
40.8
40〜44歳
57.2
42.3
45〜49歳
54.8
45.0
50〜54歳
49.9
49.5
55〜59歳
44.6
54.6

総じて高い転職の満足度

 では、実際の転職状況はどのようなものであろうか。
 これまでに転職経験のある人が50.2%。2人に1人が転職の経験を持つ。
 また過去5年以内の転職と限定すると28.1%となる。首都圏のワーキングパーソンはおよそ1300万人。つまり約400万人が過去5年の間に転職しており、年間80万人が転職した計算になる。
 彼らの約8割(79.2%)は「転職に満足」しており、この不況下に転職した人々の数字としては高い結果といえよう。
 これを雇用形態別に見てみると(図表3)、正規社員の満足度が77.7%であるのに対しフリーターでは同程度の75.3%、パートタイマーに至っては82.7%と正規社員に比べて5ポイントも上回っている。雇用形態の多様化が進む中、就業者のパート・アルバイト比率は高まっているが、転職満足度に関しては、就業形態による差は見られないのが特徴といえる。

図表3 就業形態別転職総合満足度 (過去5年以内転職経験者/単一回答、単位:%)
満足・計
不満足・計
全体
79.2
19.1
正規社員・正規職員
77.7
20.0
契約社員・嘱託
78.5
21.0
フリーター(社会人アルバイター)
75.3
21.3
パートタイマー
82.7
16.6
派遣
84.0
15.2

産業社会と個人のマッチングの視点

 雇用のミスマッチが世間でいわれて久しいが、この400万人の転職経験者のマッチングの内容について少しデータを見てみたい。
  過去5年以内の転職者(400万人)が自ら起こしたアクション(自発的)であるのか企業の都合でやむなく強いられたもの(非自発的)であるのかをみると、84.4%は「自分の希望で転職した」との回答をしている。昨今社会問題化しているリストラなどによる非自発的転職は、13.7%と数字の上からは少数派である。
  しかも「会社倒産、人員整理・解雇」を理由とするものはそのうちの61.4%。不況下の転職というと非自発的転職者や失業者の方に話題が集まりがちであるが、産業社会と個人のマッチングを全体的に考えるとき、8割の自発的転職者に注目し、ここの両者のマッチングを効率的に行うシステムを検討することがより重要であると考えられる。

今後高まる民間のマッチング機能

 最後に、実際のマッチングの効率について手元にあるデータで多少検証してみよう。
  まずは転職者の入職経路を、チャネル別シェアで見てみる(図表4)。マッチングの量的側面である。転職者の入職経路を調べてみると、転職先をみつけた情報源は「求人広告」が最も高く、41.9%の転職者が求人広告により転職先を見つけている。続いて「家族や友人・知人」29.7%、「ハローワーク」は8.5%にすぎない。募集活動の支援や職業紹介について、公的機関による活動だけではすべての転職者のマッチングをカバーしきれていない現実が、数字の上に現れている。いまや民間の果たす役割が極めて高いことは自明である(図表1)。
 職種別に入職経路を見てみると、「サービス職」においては求人広告は51.1%、ハローワークは3.9%。「運輸・通信関連職」では、求人広告は45.5%に対し、ハローワークは7.6%。「事務職」では求人広告が46.2%に対しハローワークは10.9%となっており、現在日本の雇用を牽引している職種に関しては、求人広告の果たす役割を改めて思い知らされる結果となっている。一方、ハローワークのシェアの高い職種は、「農林漁業関連職」34.2%、「保安・警備職」21.7%と、明らかに民間サービスとは異なる構造となっている。
  就業形態別には、正規社員への転職では、「求人広告」で33.4%、「ハローワーク」で11.7%、「民間人材紹介会社」で1.7%が転職先を見つけている。パートタイマーは「求人広告」54.6%、「家族や友人・知人」26.4%、「ハローワーク」6.6%となっており、派遣は「求人広告」42.9%、「人材派遣会社」29.7%、「ハローワーク」1.9%である。個人の働き方が多様化していく中、「求人広告」が正規雇用に限らず多様な就業形態への支援を実現できているのに対し、「ハローワーク」には画一的な正規雇用支援の傾向が色濃く見えるのは気のせいだろうか。
  一方、マッチングの質的側面はどうだろう。クオリティは指標化が困難であるが、入職経路別の転職満足度の違いで見てみたい。
  転職者の8割が満足しており、全体的に満足度が高いことは先述のとおりである。結果的には入職経路による満足度に顕著な違いはなかった。求人広告でみつけた転職者の満足度は78.8%、対してハローワークは73.4%でともに全体値と同じ程度で、僅差しかない(図表5)。ただ、一点興味深いのが、「民間人材紹介会社」で83.0%と最も満足度が高かった。その支援内容の内訳として「専門職・技術職」が37.4%と産業社会から需要の高い職種に集中している点も注目すべきであろう(図表6)。シェア的にはまだ1.0%と小さい限りであるが、ハローワークとほぼ同様の機能で9.6ポイントの満足度の差は、今後の労働市場における民間の役割が増すであろうことを予見させるに十分な数字である。

図表4 職種群別・就業形態別入職経路 (過去5年以内転職経験者/単一回答、単位:%)
働きたい会社に直接問い合わせ 学校(学生課)の窓口や掲示板 ハローワーク(職業安定所) 民間人材紹介会社 人材派遣会社 求人広告 その他のインターネット 家族や友人・知人 その他 無回答

全体
5.7
1.0
8.5
1.0
1.5
41.9
0.2
29.7
1.7
8.8
サービス職
7.2
0.4
3.9
-
0.4
51.1
0.1
24.7
2.2
10.0
保安・警備職
3.4
-
21.7
-
-
50.7
-
17.4
3.4
3.5
農林漁業関連職
-
-
34.2
-
-
13.0
-
52.7
-
-
運輸・通信関連職
4.5
0.4
7.6
-
0.5
45.5
-
29.2
1.1
11.2
生産工程・労務職
4.9
0.1
11.0
0.9
-
45.2
-
31.1
0.8
6.0
管理職
6.5
0.8
6.9
3.5
0.8
18.4
-
33.1
2.0
28.0
事務職
5.0
0.9
10.9
0.8
3.7
46.2
0.2
26.4
0.9
5.1
営業職
3.8
-
6.0
2.4
0.3
28.3
0.3
42.9
2.5
13.5
専門職・技術職
6.9
2.4
8.8
2.1
1.7
29.5
0.1
35.1
2.9
10.6
分類不能の職業
2.5
7.5
4.1
1.1
-
45.6
1.2
24.9
2.3
10.7



正規社員・正規職員
5.5
0.9
11.7
1.7
0.7
33.4
0.2
32.8
2.2
10.9
契約社員・嘱託
4.9
1.2
5.4
0.6
2.3
45.6
-
30.0
2.3
7.8
フリーター
(社会人アルバイター)
11.9
1.2
2.0
-
0.6
45.2
0.3
27.1
1.9
9.7
パートタイマー
4.7
1.0
6.6
0.3
0.2
54.6
-
26.4
0.5
5.7
派遣
2.1
-
1.9
0.8
29.7
42.9
0.7
16.2
1.5
4.0

図表5 入職経路別転職総合満足度 (過去5年以内転職経験者/単一回答、単位:%)
満足・計
不満足・計
全体
79.2
19.1
働きたい会社に直接問い合わせ
81.5
15.6
学校(学生課)の窓口や掲示板
76.8
18.8
ハローワーク(職業安定所)
73.4
26.0
民間人材紹介会社
83.0
17.0
人材派遣会社
77.8
22.2
求人広告
78.8
20.4
その他インターネット
66.4
33.6
家族や友人・知人
82.1
17.2
その他
85.3
11.7

図表6 入職経路別職種 (過去5年以内転職経験者/単一回答、単位:%)
サービス業 保安・警備職 農林漁業関連職 運輸・
通信関連職
生産工程・
労務職
管理職 事務職 営業職 専門職・
技術職
分類不能の
職業
20.7
0.7
0.2
5.3
13.7
2.9
29.5
6.6
17.9
1.7
26.1
0.4
-
4.2
11.9
3.3
25.9
4.4
21.6
0.8
7.7
-
-
2.0
2.1
2.5
27.7
-
44.3
13.7
9.4
1.8
0.8
4.8
17.9
2.4
37.8
4.7
18.8
0.8
-
-
-
-
11.7
10.2
22.7
16.0
37.4
1.9
6.0
-
-
1.7
-
1.5
70.1
1.2
19.5
-
25.2
0.9
0.1
5.8
14.8
1.3
32.5
4.4
12.6
1.9
16.1
-
-
-
-
-
42.2
12.4
15.2
14.1
17.2
0.4
0.3
5.2
14.4
3.2
26.1
9.5
21.1
1.5
27.3
1.4
-
3.3
6.2
3.4
15.9
9.5
30.6
2.4


『Works No.44 機能する「成果主義」』(2001年2月発行)掲載

参考ページ:ワーキングパーソン調査

 
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