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競争に勝つ企業になるために
――東京電力では1999年から、ノバルティス ファーマでは97年から、順次成果主義を取り入れていらっしゃると伺っています。まずは東京電力取締役労務人事部担任の内藤様に、現場の取り組みの状況についてお話をお聞きしたいと思います。
内藤 3年後の電力の完全自由化という大きな事業環境の変化がありますから、以前から非常に問題意識をもって取り組んでいました。しかし、当社の場合、人事・労務が2つの組織に分かれていたために機動的な制度改革に取り組めないという状況があり、そこでまず、その2つを統合したのが97年です。と同時に、統合の過程で、どのような人事・組織改革を行うべきかを検討し始めました。その過程で、3つの目的が出てきました。 1つ目は、「競争に勝てる企業を作る」というもので、その方法として具体的な改革をいくつか進めています。 まずは、「組織として俊敏な対応能力をつけること」。グループマネージャー制を作り、メンバー、グループマネージャー、部長の3階層を基本とするフラットな組織構造としました。また、肥大化傾向にあった管理職ポストの削減にも取り組んでいます。8000あったポストをその4割程度までスリム化することを目指し、現状で半分くらい達成しています。 そうすると、今度はどんな人材をそのポストに据えるのか、選別基準が問題になってきます。 従来は学歴別年次順送り人事で、多少の選別はあっても極めて平和に和気あいあいとやってきました。その結果ポストも増え、高校卒の同期入社が退職するときには、その大半は課長になれるという状況だったのです。それを最終的には3〜4割まで減らすという設計をして進め、大変難しい問題ではありますが、学歴別、年次別に管理職任用率を決めてしまいました。支店、営業所単位でその比率を守ってもらうのです。つまり、「彼は頑張っているから課長にしようよ」というのではなく、将来のリーダーとして育てる視点で若い人材に仕事を経験させていかないと将来のリーダーにならないということです。非常な抵抗がございますが、組織能力的に競争に勝てる組織になっていこうということで進めています。 さらに、人件費と労働生産性についての改革も進めています。自由化によって外資系企業が参入してきたとき、競争力ある企業であるために、これは欠かせません。ポストの選別によって個人別の給与水準適正化は自然と進められますが、協力会社を含めた電力料金に占める人件費比率や要員生産性についても、アメリカとの比較を行い、競争に勝てる水準を設定し、その実現に向け努力しているところです。 2つ目の目的は、やはり社員が生き生きと働く、社員も将来の心配がなく仕事ができる基盤を作ろうということでした。これは成果主義といえるかわかりませんが、要するに「頑張った人が報われる会社にしよう」と。グループマネージャーについては行動チェックポイントとしていくつかのコンピテンシーを示しました。一般の組合員については行動基準を提示し、それを評価項目としています。 3つ目は、企業イメージ、それから地域からの信頼という、「企業のブランド力を高めていく」発想の施策です。規制に守られた企業として特別に見られる部分もかなりありますから、そのような制度、例えば支店長社宅など逐次廃止しています。また、給料は大きくは上がらない、昇進もないということになって会社への信頼がゆらぐことへの対応として、一番ニーズのあるところには、温かい手を差し伸べようとしています。例えば、子育てや介護といった問題です。これらと仕事との両立は、本人にとって深刻な問題ですから。
社員のモラールダウンへの対策
石川 改革を進められるにあたっては、かなり抵抗もあったでしょうね。 内藤 今でもありますね。要するに、今までは昇進が個人の動機付けだったわけです。それがなくなってしまった。30年経って課長になれる割合が3〜4割になってしまったわけです。そうすると、若い人たちが、「これからどうなるのだろう」と首をかしげているわけです。仕事そのものに生きがいを、といっても、すべてがおもしろい仕事ばかりではないとすると、現実にはなかなか難しいものがあるんですよね。加えて、人材育成の目安であった昇進過程が取り払われると、今後は育成をどうしていくのか。 高橋 よくわかります。ピラミッド組織では偉くなることがすべての基本で、偉さ加減の基準を全部制度化しているんです。偉い人は責任も大きいし給料も高い、それが育成の目標にもなる。だからそれがなくなるとマネジメントの根本にかかわりますよね。 内藤 しかし、実際にはいきなり、「皆、自分で自分のキャリアを考えるんだよ」というわけにはいきませんから、会社側からの何らかの気づき、ステップの用意は必要だと思っています。 大久保 今日おこしいただいた東京電力と、医薬品業界のノバルティス ファーマでは、成果主義を導入する前提に、大きな違いがあると思います。東京電力で仕事をした、そこでスキルを身に付けた、そのスキルが東京電力以外の会社に転職しても非常に有効で評価される技術であるという状態がそもそもあるのであれば、成果主義を導入しやすい。つまり、ある意味で社外へ、という逃げ場があるということです。 つまり、医薬品業界は転職市場がありますが、東京電力は非常に特殊な業界ですから、そこでの経験がほかの会社でどれだけ活きるかは難しい問題です。とすると、社内的な評価に不満があっても、転職を思い留まるという選択をする可能性が高くなります。この意味からも、社内に流動的なマーケットを作ることの重要性があります。 この社内の人材マーケットと成果主義の導入は大きな関連があるように思いますが、どうでしょうか? 内藤 昇進はない、給与は上がらないというと、やはり自分のやりたい仕事をやるというチャンスを増やさざるを得ないですよね。それは社内公募制と転職支援の両輪で進めています。社内で働きがいを求めて、求められない場合には、社外にも目を転じてもらうと。でも、実際には電力固有の特殊な仕事ももちろんありますから、それについては社外に目を向けるのはなかなか難しい。現状の社内公募制は、本人の情熱や使命感が最も重要となるような仕事を対象とするのみですが、ゆくゆくは、本当は、通常業務にも導入して、上司を選べるようにまでなれればいいと思っています。
給与水準が高い、根本的な理由
大久保 任用率についてですが、新しい任用基準をどのように示しているのですか? 内藤 人事考課制度の評価の項目になると思いますが、わかりやすい例として、例えばグループマネージャーは、個人で上司と意見交換をしながら適切なレベルの目標を設定して、それについて1年後に評価する。これにはプロセスの行動評価も入ります。 しかし、これが直接任用に結びつくかというとそうではないのです。営業所長以上のポストについては、営業所長が全人的な評価で次の後継者、およびその次の後継者を3名ずつ指名する。その時に例えば、昭和〇年入社のグループマネージャーの任用率を3割におさえてくださいと、そんなお願いをして、3割に達してしまうとその年次からはそれ以上任用できないわけです。そうすると任用率が未達成の若い人から任用するしかない。強制的に若い人材を抜擢する仕組みを作り上げてしまったのです。 これを営業所長と話をすると、非常に抵抗はあります。しかし、私たちはあくまで任用率に言及し、「改革には痛みがつきもの、耐えてくれ」と。 高橋 私は今おっしゃったことはとても重要なことだと思います。成果主義というと何でも成果で決めるというイメージがありますが、私は「組織の成果の志向性を高めるのが成果主義」だと思うんです。 内藤さんは、「給与をどう改革したか」というよりも、「ポストの数を減らし抜擢の仕組みをどう作ったか」、すなわち、「人のフローの部分」について多く話されていました。私は成果主義を達成するには、そのように、「組織の成果の志向性を高める」方が重要だろうと思っているのです。改革を進めるなかで、そんな問題意識はおもちでしたか? 内藤 かつてから給与水準適正化の必要性については問題になっていました。しかし、適正化を阻害する原因を分析すると、給与制度が原因である割合は3割、残り7割の原因は人事任用にあるということがわかったんです。ですから、人事任用における慣行を抜本的に断ち切ることに踏み切ったのです。
とにかく現場と話すということ
大久保 任用のルールを変えるときに、若い人たちの抜擢が促進されて、今まででいえば上がるはずの人たちが上がらなくなる。 御社のように現業職を多く抱えていて、安全性や安定供給という問題が非常に重要な事業で、最大限全員が一定以上のモチベーション、モラールをもたなければならない場合、モラールダウンが起こるかもしれない構造への変革をどう受け止めていらっしゃいますか? 内藤 対応の決め手はないです。私も全店回りまして、社員のモラールダウンの悩みをかかえている責任者、営業所長に話を聞きました。一般社員の最高の等級は5等級のうち1級ですが、退職まで一般社員のまま、10年以上1級で留まる社員が出てきてしまう。今までは定期昇給で少しでも給与は上がっていたのですが、それも上限を作ったので、なくなってしまった。 「昇進もない、給与は凍結。どうしてくれるのか」という悩み、問いに対しては、私は電力事業が置かれている環境を理解してコミュニケーションをよくとってほしいと話をしています。あなたの業績が悪くてこうなっているのではなく、こういう環境条件のなかでやむを得ないのだ、と。それからもうひとつは、仕事におもしろみをもってもらうこと。難しい部分もありますが、同じ等級でもより難しい仕事を担当してもらうというように、仕事の方に関心をもってもらうほかないのです。 石川 決め手はないとおっしゃいましたが、やはり改革のトップ、改革をリードされる内藤さんが直接現場に行って、直接皆さんと話す。そのコミュニケーションがかなり重要なのではないでしょうか? 内藤 そう思います。とにかくコミュニケーションをして、全店回って直接対応しようと。「経営側が何を考えているのか」を共有しないと疑心暗鬼になりますよね。そこで先に申し上げた、一番困る問題、介護や子育てについては手厚くしようというような話をして、理解を得ます。経営陣も激論をしているわけです。転職支援制度を作っても重要な人間から先に辞められたらどうするんだ、とか。そういうなかで、我々が悩んでいることを率直に伝えてコミュニケーションを図るということが必要だと思うのです。 高橋 コミュニケーションは、本来それを一番行いたいと思っている人間が言わないと伝わらないですよね。そうじゃないと質問があっても、答えられない。「言われていることを説明しているだけだ」と。 内藤 ええ。そして、何よりも、「自分はこの会社に必要とされていないのではないか」という誤解を生じさせてはいけないと思っています。 我々の職業意識として、地域社会に対し安心・安全を提供し、ある意味では大地になって支えになるようなものを我々が担っているのだということがあります。そういう意味では仕事に対する使命感というのは大変強いと思います。例えば、お酒を飲むのもそんなに飲まない。いつ招集がかかるかわからないという部分がありますので、独身寮で呼び出せばすぐ駆けつけるとか、呼び出さなくても自発的に来るとか、そういう職業倫理が非常にもちやすい企業だと思います。 ただ、成果主義で、競争とか、いわゆる業績という意味での短期的な成果を強調すれば、必ず敗者は出るわけです。そうすると自己の正当化や嫉妬によって内部告発につながる可能性もあります。ですから、そういう意味では、企業としての任用選別の過程と本人の気づきが並行していく、言い換えれば、選別過程と人格の成熟が両輪にならないと組織は荒れてしまいます。選別も時間をかけて、あまり若いうちにはっきりする必要はない、ある程度、選別の結果を消化できるまで待ってからと考えています。
合併という混乱からのスタート
――ノバルティス ファーマの場合、東京電力の「環境変化」という外因とは異なり、「合併」という緊急度の高い内的な要因からのスタートでした。 石川 97年の合併前から、私はサンド薬品の人事部で制度改革を推進していました。それが突然、社長から合併と言われ、サンド薬品と日本チバガイギーという2つの会社のまったく異なる制度をひとつに統合しシナジーを出すという課題に取り組むことになりました。2つの会社を統合することがいかに混乱を招くことか、そのプロセスの中で実感いたしました。 当時は成果主義を言われ始めた頃でしたが、私の理解では、成果主義とは「金銭で意欲を起こさせる」というイメージが強く、導入することは難しいと考えていました。合併直後の人事方針としては、「競争力のある会社と競争力のある社員が共存して協力する」ということを打ち出しました。そして試行錯誤のなかで走りながら考えた成果主義の定義は、「社員と会社が常に自己革新を行い、成長を促す仕組みをつくっていく」ということでした。 一方、統合過程の混乱の中、経営の主軸となるビジョンをつくるべきだと考えました。社是のようにトップダウンで社員に示すのではなく、具体的で社員に分かりやすいものをボトムアップでつくる必要があると考え、両社から計500人くらいの社員を参加させ、どんな会社にしたいかを徹底的に討議してもらいました。スイスの本社から提示されたビジョンともあわせ、役員、中間管理職、社員の代表が集まり、経営がめざす方向性、企業価値、社員の行動指針を明確にしました。これには約半年という時間がかかり、全世界のノバルティスから「日本は統合に時間がかかりすぎる。もう合併は無理だ」と言われたほどです(笑)。 新会社における経営、組織運営をどう行うかという議論に関し、日本以外のほとんどの国では戦略に重きを置いていて、具体的な実践にあまり目が向いていませんでした。しかし日本では、業績を上げ会社が成功していくためには、具体的にどういう経営をすべきなのかという、実践に焦点を当てた議論に8割ぐらいの力を注ぎました。 実際に成果を上げていくための仕組みの大きな柱として「目標によるマネジメント(MBO)の導入」をいたしました。このMBOには、組織の競争力を高めるサイクルと、社員が意欲をもって成長するサイクルとがあります。 組織強化のサイクルとしてまず、目標設定を会社目標から個人目標に落とすサイクルがあります。外資系企業では優秀な社員だけに焦点をあてた制度を導入する傾向がありますが、これでは会社全体としての成果が出ません。大多数の一般的な社員が自分の目標を設定でき、振り分けられた目標ではなく「期待される役割の中で何ができるか」を評価していきたいと私たちは考えました。したがって単年度の組織の目標設定だけではなく、「職務責任領域」と呼ぶ、ひとりひとりに期待される役割のなかでそれぞれが目標を立て、それを評価する、という仕組みをつくりました。 また、社員の成長を促すサイクルでは教育に力を入れておりまして、この仕組みを補完する役割として「自己向上プラン」を導入しています。今までは自己申告によって異動の希望を聞き会社の努力目標としていましたが、「自己向上プラン」では、やりたい仕事があればそのためにどんな努力をしているか等を尋ね、仕事への積極的な取り組みを引き出す仕組みとしています。その「自己向上プラン」を異動の参考にすると同時に、教育のニーズにもつなげていこうという狙いです。
ビジョンの共有の重要性
石川 合併に際しては本社トップのビジョンを各ローカルのトップがよく理解していなければなりません。そこで本社のトップがボストンの大学にマネジメントの講座を設け、全世界のトップマネジメント400人に受講させました。各国の役員は有無を言わさず年3回、計3週間、ボストンおよびスイスの山の中に集められ、そこで会社をどうすべきかという議論を積み上げました。これは世界のマネジメントが互いに知り合う機会となりました。合併のときにはさまざまな感情が現れますが、その感情をぶつけ合いながら新しい組織を成功させようという気持ちを新たにすることができました。 我々は「合併」という言葉は使いませんでした。2つのものをひとつに「統合」することによって、組織強化と社員の成長というより大きな成果を生み出したいと考えたからです。 ――具体的には、どのような組織を作り上げてこられたのですか? 石川 2つの制度を統合する際、組織をできるだけ簡素化する努力をしました。階層も本部長、部長、グループマネジャー、一般社員という4つにしました。大変重視した点として、変化の激しい状況の中で終身雇用からの発想の転換を図るということがありました。従来はある程度の年次になるとほとんどが管理職になっていましたが、今は管理職を目的とせずひとりひとりがエンプロイアビリティを確保する。すなわち、どこへ行ってもプロとして立派に通用する人材を育成することに転換しました。 報酬については会社の業績と個人の業績によって変動するシステムを導入し、業績で変動するインセンティブの部分を厚くしてボーナスに連動させる仕組みをつくりました。組織に貢献し、頑張ればその分報酬がついてくることを実感してもらいたいと考えました。 高橋 石川さんのお話で注目したいのは、ビジョン共有のための、エグゼクティブに対する力の入れようでしょうか。日本の場合、役員に対して教育がなされることはほとんどありません。 石川 まずトップから教育して変わらなければ社員をまとめていくことなどできないと、トップが判断したのだと思います。 高橋 やはり、ビジョンなき成果主義は、指標が財務指標に偏りますよね。 例えば、「過去2年以内の新製品が、出た製品の売上比率の何%でなければならない」と新規市場開拓の指標をおく企業も、あるいは、顧客満足度を重視し、それを指標とする企業もある。いずれも、ビジョンがなければ出てこないものです。しかし、財務指標は、ROEやEVAなど、基本的にはビジョンがなくても指標が立てやすい。その分、短期的志向になりがちです。 石川 我々も、財務指標に偏っていたことへの反省から、現在は、「財務的業績」のほかに、「顧客志向」「イノベーション」「人材」の3つを重視して、会社の事業の目標を毎年設定するようにしています。
「成果」を個人にどう求めるか?
大久保 私は、極端にいえば、成果主義は賃金の差がなくても可能だと思います。要するに、「成果主義」とは、「企業の組織、文化、風土について、トップとミドルマネジャーとメンバーの間できちんとコミュニケーションがとれているか」「それをサポートする制度やルールがあるか」という問題ではないかと。「あなたには、成果としてこういうことを期待している」「あなたの仕事の成果にはとても物足りなさを感じている。これを変えてもらわないと困る」というようなやりとりを、上司と部下との間で何回繰り返したか、ということが大事だと思うんですね。 フィードバックのない成果主義は、どう考えてもいびつですし、フィードバックのないところへの成果主義の導入は、決してプラスにはなりません。 そして結局、個人に何を期待するかということは、会社自体が何を目指すのかという「ビジョン」がやはり重要になってきますよね。 石川 当社でも統合時からトップが自ら各事業所、支店を歩いてビジョンを浸透させる努力をしました。社員と直接対話し、率直な疑問を聞き、会社の方針を理解してもらうよう努めました。大変時間のかかる作業を繰り返してきており、今でも続けています。また新たに衛星放送を導入し本社のスタジオからトップが直接社員に語りかけることを始めました。言葉というより、どれだけ熱意をもって社員に語りかけるかということが重要です。ただし、これで十分とは考えておらず、さらに努力したいと思います。 それと、今我々が重視していることは内向きから外向きへの転換です。統合により新会社として発足して以来、組織固めからスタートしたので、どちらかというと内向きでした。しかし企業としては競争相手は外にあるべきです。また顧客志向に一層重点を置かなければなりません。顧客が我々をどう見ているかというサーベイを実施し今後につなげていこうとしています。 大久保 ビジョンの問題でいうと、成果主義は個人に対して「最大限の力を発揮して、最大限の業績を上げてください」と要望することですよね。ということは、本人にある程度、裁量をもたせなければいけないと思うんです。裁量をもたせるといっても野放図に何でもやらせるというわけにはいきませんから、ある程度、OBラインを決めて、範囲を決めなきゃいけない。つまり、「あなたは350ヤードあるこのグリーンを目指してください」というのがビジョンで、しかもOBラインは設定してあります、ということです。どのクラブを使ってどう攻めようがかまわない。自分でやりなさいと。 高橋 今、世界の投資家の主流は年金と投資信託で、一度株を買ったら5年以上もつんですね。だから単年度の利益を上げて、3年、5年後の企業を疲弊させるような行動は実は株主利益に合わないといいます。これは社員と経営側の関係もまったく一緒で、社員に対して投資をしなければ長期的に見てだめになるのは自明です、長期的に見ることが成果主義のポイントではないかと。そのときに、今の事業環境では綿密な計画を5年先まで立てるのは難しいから、やはりビジョンになってしまうんでしょうね。 内藤 私どもも、これから自由化を迎えうつなかで、我々は何をする会社なのか、どういう方向に向かうのか、やはり全社員がわかりやすい、ポジティブなビジョンを作らねばならないと思っています。今は改革の最中ですから、まずは社内の抵抗をどう押し返して、我慢して続けることができるかというのが第一ですが。 大久保 今後の展開として、企業のやろうとする目的と個人がやりたい目的がすべて一致するわけではありませんから、この両者の関係性を作っていくことが、「会社と個人が共に成長できる」ということにつながる大きな問題として、クローズアップされてくるような気がします。 高橋 私は今日、「組織品質」について改めて考えました。「組織品質」とは、組織の中の個人がどれだけ成果志向性が高いか、あるいは自律的にモノを生み出しているか、ビジョンの共有度合いが高いかなどを示す言葉です。コミュニケーションも、結局はビジョンがどれだけ伝わって、理解されているかという「組織品質」の大きな部分です。私はこの「組織品質」を、もう少し明示的に測定して上げる努力をして、そして上がっていることを確認をするべきだと思っています。 大久保 特に、売上などの数字で測りにくい成果を上げる人たちは、なかなか成果がとらえにくいんですね。だから、いったんはそれを数値としてとらえられるようにしなければいけない。そのうえで、数字を超えた新しいミッションをもつというところまで到達できるかが、成功のひとつのプロセスなのではないかと思います。
東京電力 世界最大の民間電力会社。インターネット事業にも進出。5年後には、新規事業で総売上の10%を占めることを目指している。 資本金/6,764億円 社員数/41,882名 事業内容/電気事業 売上高(電気事業営業収益)/5兆596億円(1998年度)
ノバルティス ファーマ 1997年4月、サンド薬品と日本チバガイギーが合併し、国内トップクラスの外資系医薬品メーカー、ノバルティス ファーマとして設立される。ノバルティスは、スイスに本社を置く、ヘルスケアにおける世界的研究開発企業である。 資本金/60億円 社員数/2,600名 事業内容/医薬品の輸入、製造、販売 売上高/1,354億円(1999年度)
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 | 東京電力 取締役 労務人事部担任 内藤久夫 氏
「東京電力は、100〜200名の事業所を関東一円に200カ所もつ、大企業と中小企業的な側面を併せもった企業です。そのような組織で人事制度改革をどう進めるべきか、試行錯誤の連続でした」
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 | ノバルティス ファーマ 人事・広報本部 取締役本部長 石川裕子 氏
「2つの会社が統合してより大きな成果を出していくために、組織の強化と社員の強化に努めました。日本で業績を上げるため、社員と会社がともに成長できる仕組みをつくりあげたいと考えました」
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 | 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授 高橋俊介 氏
「『年功序列は古い、ほかの賃金制度はないの?』という発想から、成果主義に入るケースは少なくありません。しかし、それは、本質的な入り方ではありません」
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 | ワークス研究所 所長 大久保幸夫
「成果主義といっても、制度論というよりは、それで本当に個人はどう動くのか、それは個人の能力向上につながるのか、個人のキャリアにどう関連してくるのか、が重要だと考えます」 |
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