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リクルートワークス研究所
 

働く個人は今、何を考えているのか?


2000 年 6月 10 日

「新卒未就職者32万人」。
企業と学生のミスマッチの解決には、
インターンシップの普及が不可欠である。


就職ジャーナル 編集長
石川純一


「やりたいことが見つからない」
働くことに「夢」を持てない
現在の大学生たち


 将来の夢は何ですか? 幼稚園生、小学生なら目を輝かせて答える質問である。しかし、今の大学生にとっては、たいへん難しい質問のようだ。今春、関西の某大学が新入生にこの質問をしたところ、多くの大学生が当惑した顔をしたという。実際、私も多くのキャンパスを訪問し新入生の声を聞いてみたが、「やりたいことが見つからない」という声を数多く耳にした。しかし、就職先について尋ねると、彼らは一様に「就職は大手企業を目指す」と言う。10人いれば10通りの夢があっていいのに、である。その反面、「嫌だけど、3年生の秋になったら就職活動をしなきゃ」というモラトリアム的な声も大変多い。社会には生きがいを持って働いている先輩が数多くいるのに、彼らには「憧れの先輩モデル」がいない。
 子供の頃にはいろいろな夢があったのに、このように大学生になると夢を持ちにくくなってしまうのは何故なのだろうか。働き方には偏差値もないため、個人の主体性が初めて発揮できる機会である。にもかかわらず、周りの評価に依存し選択される就職先。彼らの多くは、社会が創った尺度の中でしか自分を位置付けることができなくなってしまっているのが現実のようだ。



「数だけに関心が集まるインターンシップ」
では、社会システムとしての普及はない


 新卒の未就職者が32万人と過去最多となり、入社後3年以内の離職者も3割近くになった。その要因は、大学のキャリア教育の欠落と、短期決戦型の就職活動にある。3年生後半から4年生前半にかけてという、熟考する間もない短期間。断片的な情報に翻弄されながらの就職活動には、明らかに学生と社会間での連続性の欠如が存在している。こうした大学と社会の間の乖離が、未就職や離職というミスマッチを生む大きな要因となっている。これらは、多元的な問題なので1つや2つの処方箋で解決できるものでもないが、インターンシップの普及がそのキッカケとなるのは事実である。
 米国の大学生は、70%以上が在学中にインターンシップを経験し、学んだ理論を社会の中で検証し、学んだことが社会とどう対応しているのかを知る。「履修登録のキモは単位の取りやすさ」と言って憚らない日本の大学生との差は明らかだ。しかし、多くの学生と話をして感じたのは、日本の大学生も勉強をしたくないのではなく、何故大学の授業が自分にとって必要なのか、どんな授業を履修登録すべきなのかがわからないだけということだ。この状態が解消されれば、少しは大学が彼らの将来にとって意味のある存在になるにちがいない。
 米国でインターンシップが普及した背景に、企業が求める人物像と大学で育成される人材との間のギャップが拡大し、より実務的な教育の機会が求められたことがある。現在の日本の状況もこれに近く、インターンシップに対する関心が急速に高まっている。しかし、多くの議論はまだまだ絶対数を増やそうという数の議論が中心で、個々の内容にまで議論は及んでいない。特に、企業のメリットには議論が至っておらず、社会貢献という言葉で済まそうとする気運すら感じる。これでは、社会システムとして普及していくことは期待できないだろう。インターンシップは企業の青田買いを促進する、という否定的な見方も一部にはあるが、未就職や離職という問題には、実は非常に高い社会コストが発生していることを認識しなければいけない。産学官連携の下でのインターンシップの定着。これが求められている姿なのだから。



(いしかわ・じゅんいち)
入社以来一貫してHR領域を担当。「自己実現のための、キャリアデザイン構築」をテーマに、大学生へ向けた「辛口のアドバイス」を心がけている。企業も学生も価値観が多様化した現在、個対個の本質的な相互選択が可能な社会インフラの実現を目指している。



─ 「個人の自立」と共に ─
十分条件として“地域選択”も同時に行いはじめている「働く個人」


UターンIターンビーイング 編集長
小山智通


 1990年代後半以来、人材マーケットにおいても「個人の自立」「個人の時代」といった言葉があちこちで使われている。実際、2000年は、優秀なそして自立した個人群が「能力開発」を有効に使いはじめ、選択と移動を開始しはじめている。
 企業そのものがムラ社会を創造していた時代は、個人は生活環境を含め企業依存で事足りていた。しかし個人が自立しはじめると同時に企業の持っていたムラ機能は希薄になってきている。「働く個人」はすでに考えはじめている。個人の自立は、「能力開発」や「企業選択」という従来の「働く」ための因子だけではなしえなくなってきている。必要条件かもしれないが十分条件ではない。生活環境等様々な視点での“地域選択”も同時に個人は行いはじめている。
 一方で地域別の就業構造や労働環境をみるに、少なくとも現在日本では金太郎あめ状態である。製造業が主流を占め、そして土木建築が労働基盤を支えるといった構造はどの地域をみてもほぼ同じである。3大都市圏以外では特にその特徴は顕著である。
 「真の個人の自立」「真の個人の時代」がきた時、個人が集う土地すなわち地域には、様々な新たな顔が生まれるはずである。個人の地域選択の幅も広がる。その時、企業は個人との関係の明確化だけでなく、どの地域でどのようなポジションをとるのかといった意思を持ち、発信しなければならなくなる時代がくるかもしれない。



(こやま・ともゆき)
入社以来9年間は一貫して人事セクション。その後、地方への人材流動化等地域の活性化を様々な視点で実行していく地域活性事業へ。北海道から沖縄まで日々出張している毎日。2000年を迎え現職を兼務。「地方の時代の真の意味」を常に模索し、現実のものにすべく活動中。



ベンチャーブームが提起する、人と仕事のベストマッチング

アントレ 編集長
野村 滋


 株式公開準備中のあるベンチャー企業に、最近、大企業からの転職希望者がたくさん訪れるそうだ。「面接のときに転職理由を聞いてみると、『最近は大企業も危ないので、将来性のあるベンチャーで働きたい』と答える人が多いんです」と、その会社の社長は苦笑していた。しかし、印象的だったのが、「きっかけは何でもいいんです。研究した結果、本当に自分が打ち込める仕事に出合う人もいれば、偶然出合う人もいる。現在のベンチャーブームが後押しとなってベンチャーに転職した人が、そこで本当に自分が打ち込める仕事に出合えればいいし、私たちもそういう人との出会いを待っている。同じ仕事をやるにしても、実行する人が違えば結果が全然違ってきますから」という社長の話だった。
 これは成長しているベンチャーには共通していることだが、とにかく働いている人、ひとりひとりに活気がある。「自分がリーダーシップをとってやるんだ」とか「自分の責任でこの仕事を必ず成功させてやる」といった「人の活力」を感じることができる。そこには過去のナレッジの集積がない分、「自分たちの手で何かをつくりあげよう」という雰囲気がある。
 あるアメリカの著名な経営者が従業員に対して“Don’t falling love with business”とメッセージしているそうだが、個人的には疑問だ。仕事に打ち込んでいる人の活力の集積こそが、企業の強さを決める一番の源泉ではないだろうか。



(のむら・しげる)
起業・独立・新規事業のチャンスをつかむビジネス情報誌『アントレ』編集長。求人情報誌時代から通算して、1000件以上の現場を取材。自治体や商工会議所の主催する新規開業セミナーでの講師や、「創業・ベンチャー国民フォーラム」幹事など幅広く活動中。

『Works No.40 戦略的HRMを生み出す「人材ポートフォリオ」』 (2000年6月発行)掲載

 
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