|
1999年6月、産業構造転換・雇用対策本部は「緊急雇用対策」において「総合的人材ニーズ調査」の実施を決定。通商産業省が日本商工会議所に調査を委託、リクルートおよびリクルートリサーチが再委託を受けて、実査を担当した。
人材需給の質・量の
正確な測定を目指す
「総合的人材ニーズ調査」では、以下の3つのポイントを挙げることができる。第1には、現在の雇用問題の所在を明確にするという点である。
戦後の日本では、長い間雇用問題が社会問題化することはなかった。雇用問題が先鋭化したのはつい最近のことであり、政策立案を図る上での正確な材料が十分には整備されてこなかったという現実がある。
例えば、就職難が強く叫ばれているが、実は多くの企業が現在のような厳しい環境でも優秀な人材は欲しいと考えている。企業が求める人材レベルに見合う人材が見つからないだけではないか。人材が存在しないのではなく、労働市場が十分に機能していないため、企業が採用したいと考えても、どう行動を起こせば本当に欲しい人材を採用できるのかが見えてこないからである。
そのため採用意欲はあっても、それが顕在化せずに潜在的ニーズで終わってしまっている可能性が高い。
人材の流動化を推進する役割としては、例えば公共職業安定所(ハローワーク)の存在を挙げることができるが、実際の人材移動の中に占める公共職業安定所の比重は20.0%である(平成10年雇用動向調査、入職経路別入職者数構成比)。また、高度な知識・経験を求められる専門職などのホワイトカラー系人材ニーズに関しては、ハローワークの情報だけでは不十分であるともいわれている。
このように、従来のデータからは質・量の両側面で人材ニーズが十分に反映される状況とは言い難い。
雇用政策を考える上では、何より人材需給の質・量の両面からの正確な実態把握が必要となってくるのである。
図表1 総合的人材ニーズ調査 URL:http://www.cin.or.jp/needs/
全国の総求人数は
591万人を超える規模に
今回の「総合的人材ニーズ調査」では、全国に実に591万人の人材ニーズがあることが明確になり、これまでの各種調査に表れた以上の人材ニーズが存在することが明らかになった。(図表2)
なぜなのか。ひとつには、今回の調査ではいま現在人材を求めている企業だけではなく、環境が整った場合、今後1年間にどれほどの人材が必要になるのかまでを含めて調査した点を挙げることができる。つまり、顕在化しているニーズだけではなく、潜在ニーズまで掘り起こしたわけである。
いまひとつの要因として、従来の調査ではほとんど対象外となっていた従業員数5人未満の企業も調査対象に含めた点を挙げることができる。右下の図にあるように、従業員数1000人以上の企業では顕在・潜在求人数は7万人にすぎないのに対し、従業員数4人以下の企業では実に356万人に達している。総求人数591万人の6割以上を従業員数4人以下の企業群が占めているのである。
日本の経済は中小企業が支えているといわれながら、各種の統計上はこうした企業群は調査対象とされることがきわめて少なく、結果的に各種施策の上でも十分考慮されてきたとはいえない。しかし、実はこうした企業群にスポットを当てることが強く求められている。例えば、注目のIT関連分野をはじめとする各分野での開業支援策を講じ、資金や人材面での援助などによって既存の中小企業群のさらなる発展を推進することが重要になってくる。
図表2 求人数と就業者数
|
合計求人数
(人) |
顕在求人数
(人) |
潜在求人数
(人) |
ニーズ成長性
(%) |
就業者数
(人) |
雇用成長性
(%) |
全国
(全体) |
5,912,181 |
2,671,495 |
3,240,687 |
221.3 |
64,181,893 |
9.2 |
※ウエイトバックしているため、顕在求人数と潜在求人数を合計した人数は、合計求人数と異なる。
図表3 求人数と就業者数の規模別分布

| |
4人以下 |
5〜99 |
100〜999 |
1,000人以上 |
| 求人数(万人) |
356 |
203 |
26 |
7 |
| 従業者数(万人) |
746 |
2,102 |
1,061 |
1,016 |
※従業者数と企業数は「平成8年事業所統計調査」による
全国各地の特性に配慮
地域主体の政策が必要
第2には、人材ニーズは全国一律に存在するわけではない点を挙げることができる。人は通勤可能な範囲で動くのであり、地域と密着した雇用対策が必要となる。それにもかかわらず、これまでの雇用政策では全国一律のものがほとんどであった。それでは地域の産業特性をにらんだ施策とはならない。
各種の雇用対策においては、地域主体のきめ細かな施策が求められるのである。
このため、『総合的人材ニーズ調査』においては、全国に107の通勤圏を設定して、それぞれの地域特性を明確にする点にも力を注いだ。その結果、これまでの一般認識とは異なる結果が求められた地域もある。
例えば、沖縄の那覇通勤圏域は、昨今のIT産業の振興が実を結び、かなりの求人ニーズがあることがわかったが、一方で完全失業率は高く、ミスマッチの構造が存在することが明確となった。
全国レベルだけではなく、都道府県、市町村レベルでのきめ細かな施策が重要であることが浮き彫りになった。
個人の自主選択を重視した
能力開発推進に比重を
全国では591万人もの人材ニーズがあるのに、完全失業率は高止まりの状況にある。これは、企業が求める人材レベルと、個人の持つ能力のミスマッチによる面が大きい。確かに企業は強い人材ニーズを持っているが、企業が求めるレベルに達している人材が見当たらないために労働市場が活性化しないという問題がある。
このミスマッチを解消するためには、個人の能力開発が必要となってくるのはいうまでもない。これが第3の問題点である。
そのためには、まず個人がどういう能力を磨けばいいのか、その点を明確にすることが出発点になる。
企業の求めるスキルを明らかにすることで、就職・転職を考える個人が、自己啓発のあり方を含め、どういったスキルを身に付けていけば、就職・転職に有利に働くのかといったことを明らかにする必要がある。
また、教育の現場でも早い段階から職業および職業能力について体系的に捉えられる教育訓練を実施し、個人が自発的に能力開発をできる土壌を整備する必要性も高まっていると考えられる。
スキル、能力を標準化する
アメリカをはじめとする各国をみると、いずれの国でも国主導で労働者のスキル、能力の標準化を図るため、“国家能力基準”ともいうべきものを作り始めている。
例えば、イギリスが作り上げたNVQ(職業能力資格制度)は、その職場での職業訓練を通じ、実際の仕事遂行能力に対する評価によって与えられる5段階(約800種類)の職業能力資格を運用している。その仕事に必要とされる基礎的知識や専門的知識、評価基準などが記載された“仕事基準書”と呼ばれる、きわめて現実的な基準書が機能している。これは国全体の生産性を向上させ、国際的な競争力を高めるためにはそれが不可欠と考えているからであり、日本でも、このようなガイドラインの確立が求められよう。
今回の調査はそのスタートラインとして、各職種別に求められるスキル・能力を明確にすることもテーマのひとつとした。
その職種に必要とされる「実務経験年数」「基本スキル(35コード)」「専門スキル(82コード)」「資格(297コード)」の各項目に関して詳細なヒアリングを実施し、それぞれの職種に求められるスキル・能力の割合を算出している。下記は、基本スキルのうち職務遂行に必要とされる代表的なスキル12項目をビジネスアプリケーション系SEについてその必要割合を示したものである。
現在の日本の雇用の停滞を打破して活性化を図るためには、行政から、産業界、また教育界、個人レベルまでさまざまな努力が必要になってくる。
『総合的人材ニーズ調査』はそのため の基盤となる共通の物差しを提案したものという考え方もできる。
図表4 必要な能力・スキル(ビジネスアプリケーション系SE)
■スキルウエイト(聞き取り調査より)
| |
基本スキル型 |
基本スキル
重視型 |
バランス型 |
専門スキル
重視型 |
専門スキル型 |
| スキルウエイト(%) |
6% |
13% |
45% |
27% |
10% |
| 100職種平均(%) |
11% |
19% |
43% |
22% |
5% |
■基本スキル代表12項目(聞き取り調査より)

有望100職種に関する
ハンドブック化を試みる
現在の日本の困難な雇用状況を打開するためには、あらゆるレベルでの取り組みが必要になる。そのためには何よりも共通の物差し作りが欠かせない。
しかし、標準職業分類ではIT関連の技術職や金融系のスペシャリスト、細分化する営業職、介護・福祉系のサービス職などの最近の雇用情勢を的確に捉えることができず、結果として労働市場の実態がみえにくいものとなっている。それでは長期的視野に立っての雇用問題解決の足掛かりを得ることはできない。
そこで『総合的人材ニーズ調査』では、業種コード、職種コードも現実の産業界の実情に即した分類を行った。業種に関しては新産業分野も十分把握できるように212業種に分類。また、職種では、これまでの調査では現業部門の比重が高かった職種を整理統合した上で、従来の分類にはない高度な専門職などを加えて326職種に分類した。
これらの各業種、各職種の求人ニーズや業界の現状に関しては、ホームページ上の「人材市場アウトルック」で詳細をチェックすることが可能である。
今後の企業経営戦略、人材戦略を立案するに当たって、企業経営者や人事部門の責任者の方々には必見の情報となるだろう。
同時に、326職種のうち、就業者数に対する求人ニーズの比率の高い職種(成長職種)上位70と、求人広告に多い職種、従来の職業ハンドブックなどにないような職種、今後有望と考えられる職種といった観点から注目職種30を選んで「有望100職種」を選定。企業聞き取り調査によって詳細な情報を集めて分析を行った。
これはホームページ上では「有望100職種ハンドブック」をクリックすれば見ることができる。就職や転職を考えている個人にとってたいへん有益な資料となるはずである。その主な注目点を挙げておく。
●仕事の概要
同じ職種名であってもA社とB社では実際の仕事内容が異なることが少なくない。これでは応募先を職種名から選別しようとしても、本来目指している仕事内容ではないところに応募してしまうことになりかねない。
そこでまず各職種の冒頭には、この具体的な仕事内容の解説をつけた。その職種名で募集を行っている企業に仕事内容の詳細を聞き、その共通点を整理し、一般化を図った。
●求人ニーズの概要
どの業種、どの規模の企業がどれくらいの求人を行っているのか。雇用形態はどうか、学歴、募集年齢帯はどうかなどを分析している。
●必要な能力・スキル
業務スキルを「基本スキル(業務を遂行するための基本的能力)」と「専門スキル(業務を遂行するための専門的な知識や技術)」に分けた上で、どちらのスキルが強く求められているかを明らかにした。また、業務スキルの必要割合、実務経験の必要年数、資格の必要度と具体的な資格名称、代表的な基本スキル12項目の必要割合に加え、必要な実務経験内容は定性情報により明らかにしている。
●能力開発
採用後の教育・訓練をどのような形で行っているのか。OJT、社内の教育プログラム、社外の教育プログラムなどの実施率がわかる。さらに、社内・社外の教育プログラムに関して具体的にどのような内容で行っているのかプログラムの概要をつかむことができる。
●賃金相場
賃金の下限、上限、中央金額がどのあたりにあるのか金額帯別の割合でみることができる。平均値も出ているので、職種別の賃金相場をある程度把握できる。
●人材移動の状況
有望職種ハンドブックの目玉のひとつ。現在、社内でその職種に就いている人をどのようなルートで確保しているのかがわかる。例えば、新卒で入社以来一貫してその職種に就いている人の割合、社内の別の職種から人事異動によって確保した人の割合、さらに社外の企業の同じ職種から採用した人の割合、社外の企業の別の職種から採用した人の割合などがわかる。
加えて、社内の人事異動で現在の職種に就いた場合には、前の職種は何から移った人が多いのか、社外から採用した人では、どのような業種から採用した人が多いのかなども見て取ることができる。つまり、現在の自分が属している業種、職種から希望の職種への転職がどの程度可能なのか判断する際の有力な材料となる。
しかも、採用する場合の調達経路もわかる。縁故による採用、公共職業安定所の割合、職業訓練学校、各種の学校、人材斡旋会社、新聞の求人広告、就職情報誌、ハンティング・引き抜きなどの比重もみることができる。希望の職種ではどのルートからのアプローチが有効なのかを知ることができる。
この人材移動の状況はどの国のハンドブックにもなく、日本独自の注目すべき資料ということができる。
図表5 有望100職種
| 技術職 |
研究開発(電気・電子)/技術開発(建築・土木・プラント・設備)/研究開発(光関連技術)/研究開発(通信技術)/研究開発(機械)/研究開発(ソフトウエア)/研究開発(バイオテクノロジー)/建築設計/土木設計/意匠設計/アナログ回路設計/プラント設計/電気回路設計/電気設備設計/機械設計/金型設計/CAD設計/メカトロ設計/制御設計/電気通信技術者/プラント施工管理・現場監督・工事監理者/建築施工管理・現場監督・工事監理者/土木施工管理・現場監督・工事監理者/空調整備施工管理・現場監督・工事監理者/電気設備施工管理・現場監督・工事監理者/配管設備施工管理・現場監督・工事監理者/コンサルティングSE/ビジネスアプリケーション系SE/データベース系SE/ネットワーク系SE/プログラマ/サポートエンジニア(ソフト)/サポートエンジニア(ハード)/システムコンサルタント/ネットワークエンジニア/画像処理/畜産技術者/水産技術者/食品技術者/制御系SE/化学技術者
|
| 専門職 |
薬剤師/看護士・看護婦/診療放射線技師/歯科衛生士/歯科技工士/福祉相談指導専門員/福祉施設指導専門員/介護士/ホームヘルパー/新聞記者/編集/映像制作/ゲームデザイナー/ゲームプロデューサー/CGデザイナー/パタンナー/ファッションコーディネーター/ファッションデザイナー/インテリアデザイナー/インテリアコーディネーター/グラフィックデザイナー/カメラマン/コピーライター/インターネットコンテンツ制作/経営コンサルタント/ファイナンシャルプランナー/証券アナリスト/税理士
|
| 管理職 |
管理職(技術系)/管理職(事務職)/管理職(営業職)/支配人/スーパーバイザー/店長
|
| 事務職 |
総務/経営企画/営業事務/管理事務/国際事務/貿易事務/業務/商品管理/医療事務/企画/販売促進/マーケティング/商品開発/商品企画/バイヤー
|
| 営業・販売・サービス職 |
| 営業(法人新規)/ファッションアドバイザー/営業(法人固定)/美容師/営業(個人新規)/エステティシャン/営業(個人固定)/MR/セールスエンジニア/リビングアドバイザー |
|
図表6 人材移動の状況(ビジネスアプリケーション系SE/人数ベース)
■人材調達と職種間移動(カッコ内は100職種平均)

■異なる職種((2)社内異動/企業ベースのMA)
| 職種名 |
% |
| 情報処理技術者 |
82.0 |
| 一般事務職 |
12.0 |
| 営業・販売事務従事者 |
10.0 |
| 企画・販促系事務職 |
6.0 |
| その他の技術者 |
5.0 |
| 会社・団体等管理職 |
1.0 |
■異なる職種((4)社外から調達/企業ベースのMA)
| 職種名 |
% |
| 建築・土木・測量技術者 |
56.0 |
| 営業・販売事務従事者 |
44.0 |
| 機械・電気技術者 |
31.0 |
| 一般事務職 |
18.0 |
| 会社・団体等管理職 |
17.0 |
| 企画・販促系事務職 |
15.0 |
| 金融専門職 |
13.0 |
| 自衛官 |
11.0 |
| 情報処理技術者 |
7.0 |
| 集金人、その他の外勤事務従事者 |
7.0 |
■業種間移動/異なる業種((3)(4)の違う業種計/企業ベースのMA)
| 職種名 |
% |
| 鉄鋼業 |
29.0 |
| 廃棄物処理業 |
23.0 |
| その他の小売業 |
3.0 |
| 総合工事業 |
2.0 |
| 情報サービス・調査業 |
2.0 |
| 不動産取引業 |
2.0 |
| 電気機械器具製造業 |
2.0 |
| 輸送用機械器具製造業 |
2.0 |
| 建築材料、鉱物・金属材料等卸売業 |
2.0 |
| 精密機械器具製造業 |
1.0 |
顕在人材ニーズの半数は
正社員以外の雇用形態
全国の求人総数は、顕在化した人材ニーズが267万人、潜在的な人材ニーズが324万人で合計591万人に達する。その雇用形態別の内訳をみると、正社員が333万人で、全体の56.2%を占める。次いで多いのがアルバイト・パートの130万人の22.1%、以下、契約(嘱託)社員51万人(8.5%)、業務委託(個人)44万人(7.5%)、派遣9万人(1.7%)――と続いている。
しかし、この内訳は顕在需要と潜在需要の別でみると、かなり異なったものになる。
顕在化している人材ニーズでみると、正社員としての採用・活用は125万人の46.8%で、半数以下にとどまっているのである。
正社員以外では、アルバイト・パートの比率が77万人(28.8%)、業務委託(個人)29万人(10.9%)、契約(嘱託)社員24万人(9.0%)、派遣7万人(2.6%)となっている。
これに対して潜在的な人材ニーズでみると、324万人のうち正社員が208万人と64.2%を占める。顕在化している人材ニーズでは半数以下にとどまっていたのが、3人に2人近くは正社員で採用・活用したいと考えているわけである。次いでアルバイト・パートが53万人(16.4%)、契約(嘱託)社員27万人(8.3%)、業務委託(個人)15万人(4.6%)となる。
企業の多くは、本来は正社員として人材の採用・活用を図りたいと考えているものの、現在の経営環境などを考慮すると雇用コストの高い正社員の採用・活用は抑制せざるを得ず、当面はアルバイト・パートなどをはじめとする非正社員の比重を高めざるを得ない。厳しい経営環境の中で、雇用形態の多様化が必然的に進行しているという見方もできる。
しかし、企業の多くはそれがいいと考えているのではないようである。かつてのように正社員一本槍での採用に戻す必要はなく、雇用形態の多様化は避けて通れないものの、長い目で企業の維持・発展を図っていくためには、正社員としての採用が不可欠であり、やはり人材の採用・活用のメインには正社員を据えたいと考えている企業が多いものとみられる。
図表7 人材需要の規模
| |
顕在的需要
(顕在求人) |
潜在的需要
(潜在求人) |
計 |
構成比 |
| 計 |
267万人 |
324万人 |
591万人 |
100.0% |
| 正社員 |
125万人 |
208万人 |
333万人 |
56.2% |
| 契約(嘱託)社員 |
24万人 |
27万人 |
51万人 |
8.5% |
| アルバイト・パート |
77万人 |
53万人 |
130万人 |
22.1% |
| 派遣 |
7万人 |
2万人 |
9万人 |
1.7% |
| 業務委託(個人) |
29万人 |
15万人 |
44万人 |
7.5% |
| その他・無回答 |
5万人 |
19万人 |
24万人 |
4.0% |
| ※ |
顕在的需要:調査時点での人材需要
潜在的需要:景況感が上向いたり、経営環境が整った場合、今後1年間に発生する人材需要 |
本当に年齢条件は必要か
見直すべき職種もあるのでは?
雇用環境の悪化の中でも、特に深刻な問題になっているのが中高年をめぐる雇用環境であるのはいうまでもない。今回の『総合的人材ニーズ調査』でもそれが明確になっている。
全体でみると、採用・活用に当たって年齢条件を挙げている企業の割合は84.8%で、年齢不問とする企業の割合は12.7%にすぎなかった。もちろん、あまり年齢が高いと肉体的に困難が伴う職種もあるだろうし、反対にある程度の年齢に達しないと難しい職種もあるだろう。しかし、本当に全体の8割以上においても年齢制限が必要なのかどうかとなると疑問を差し挟まざるを得ない。先入観によって年齢制限を設置しているケースが多いのではないか、再考すべきところも実は少なくないのではないだろうか。
年齢制限を設けている企業は、やはり制限年齢を20歳代、30歳代に集中させている。ピークは20歳代後半から30歳代前半で、30歳代後半以降、急速に割合が低下していく。年齢条件が45歳以上とする割合は人材ニーズ総数の12.8%にすぎなかった。年齢帯でみると50〜54歳、55〜59歳とする割合はともに5%台で、60〜64歳、65歳以上となると2%台まで低下する。中高年層にはきわめて厳しい環境が浮き彫りになっている。
業種別では総合工事業がトップ
各種サービス業も
上位に顔を揃える
業種別の人材ニーズをみると、専門サービス業(合計求人数約28万人)、情報サービス・調査業(同約18.5万人)、その他の事業サービス業(同約16万人)とベスト10に各種サービス業が3業種入っている。サービス業3業種の合計求人数は約62.5万人で全体の求人合計数591万人の1割以上を占めている。
単独では総合工事業の合計求人数約65万人がトップに。その他、小売業関連が2業種(同約62万人)で、製造業は1業種(同約13万人)にとどまるなど、産業構造の変化を反映した業種構成になっているといえよう。
| 図表8 |
求人数が多い職種 |
|
<業種中分類>(上位10) |
| 1 |
総合工事業 |
| 2 |
その他の小売業 |
| 3 |
職別工事業 |
| 4 |
設備工事業 |
| 5 |
専門サービス業 |
| 6 |
不動産取引業 |
| 7 |
その他の卸売業 |
| 8 |
情報サービス・調査業 |
| 9 |
その他の事業サービス業 |
| 10 |
一般機械器具製造業 |
職種別では建設関係に加え
営業、販売、サービスも上位に
職種別の求人ニーズをみると、トップは営業(法人新規)で、以下、その他商品販売従事者、建築施工管理・現場監督・工事監理者、営業(個人新規)、土木施工管理・現場監督・工事監理者、他に分類されないサービス職業従事者――などが続く。
業種で上位に挙がった建設・不動産関連の職種に加え、営業、販売、サービス関連の各職種も目立っている。
また、製造業の現業部門の職種はきわめて少なく、職種面からみても、産業構造の変化を見て取ることができる。
なお、8位までが10万人を超え、上位10位までの求人数は合計約151万人に達する。これは総求人数591万人の約26%に相当する。
| 1 |
営業(法人新規) |
| 2 |
その他商品販売従事者 |
| 3 |
建築施工管理・現場監督・工事監理者 |
| 4 |
営業(個人新規) |
| 5 |
土木施工管理・現場監督・工事監理者 |
| 6 |
他に分類されないサービス職業従事者 |
| 7 |
営業(法人固定) |
| 8 |
その他建築・土木・測量技術者 |
| 9 |
商品訪問・移動販売従事者 |
| 10 |
金属加工作業者 |
全国の中には人材ニーズの
強い通勤圏も少なくない
全国を107の通勤圏に分けて求人ニーズをみると、地域によって雇用環境はずいぶん異なることがわかる。
就業者数に対する求人数の割合を示す雇用成長性は全国平均では9.2%だが、津通勤圏のように29.8%に達するところもあれば、反対に大牟田通勤圏のように3.1%にとどまるところもある。各地域の求人ニーズをさらにきめ細かく調査・分析した上で、その地域に即した対策を打ち出していくことが必要であろう。
今回の調査結果を踏まえて、全国の都道府県、市町村レベルで官民挙げての取り組みが求められる。
| |
TOTAL |
9.2% |
| |
東京都心6区通勤圏 |
8.5% |
| |
名古屋通勤圏 |
9.5% |
| |
大阪通勤圏 |
10.7% |
| 1 |
津通勤圏 |
29.8% |
| 2 |
那覇通勤圏 |
15.9% |
| 3 |
岐阜通勤圏 |
14.2% |
| 4 |
前橋・高崎通勤圏 |
13.6% |
| 5 |
八王子通勤圏 |
13.3% |
| 6 |
山形通勤圏 |
12.4% |
| 7 |
徳山通勤圏 |
12.4% |
| 8 |
西尾通勤圏 |
12.3% |
| 9 |
松本通勤圏 |
12.1% |
| 10 |
苫小牧通勤圏 |
11.5% |
民間主導・個人優先の雇用システムを支えるインフラとしての活用を
通商産業省 産業政策局 企業行動課 産業人材政策室 室長補佐 足立康史氏
99年6月の「緊急雇用対策」は、近年打ち出された数次にわたる雇用対策の中でも、特別に意義ある対策であったと考えています。すなわち、
1)民間職業紹介事業の原則禁止規定の撤廃など、官から民へのシフトを明確にしたこと
2)雇用調整助成金の縮小、能力開発施策の見直しなど、個人の自主選択を重視した施策を導入したこと
など雇用対策の政策哲学の大転換を図ったのです。
こうした「緊急雇用対策」に「総合的人材ニーズ調査」の実施が盛り込まれた背景には、民間主導・個人優先の雇用システムを構築していくためには、人材情報の把握と公開が前提になるとの考えがありました。
雇用対策にも求められる
「政策の時間整合性」
一般に、政策を考える際には「政策の時間整合性」に留意する必要があるといわれます。例えば、よく氾濫する河川があり、その周辺域に人が家を建てたとしましょう。すると政府は安全のために堤防を建設することになりますが、問題は、それを見た他の危険地域の人々も、新たな堤防建設を期待してあちこちの危険地域に居住し始めることです。すると、政府はまた堤防を築くというように、財政支出が際限なく拡大することは必至です。一方、誰かが家を建てる前に政府が先手を打って「堤防は作らない」あるいは「危険地域に家を建ててはいけない」とのルールを決めていたらどうでしょうか。結果はまったく異なっていたでしょう。
こうして政策を講じるタイミングによって結果が大きく異なってくる問題を「政策の時間整合性」と呼ぶのですが、私は、こうした問題は雇用対策についても当てはまるのではないかと考えています。
例えば、近年、解雇規制の見直しに向けた議論が活発化していますが、仮に労働市場のセーフティネットを十分に整備することなく解雇規制を緩和するとどうなるでしょうか。多くの失業が発生し、社会は大きなコストを支払わねばならないでしょう。民間の職業紹介機能の活性化、個人主導の能力開発の支援といった政策は、まさに広義のセーフティネットであり、経済の構造改革を急ぐためにも、緊急対策として優先的に講じる必要があったのです。
人材情報の把握と公開こそ
最優先の雇用対策
しかし、そこで活躍が期待される民間企業や個人には、大きな制約があります。それは、労働市場に関する情報の決定的不足です。あたかも労働市場というジャングルの中にコンパスもマップも与えられずに放り出されたようなものです。
従って、「緊急雇用対策」の中でも特に緊急を要する施策が、労働市場というジャングルの全体像を把握し、その内容を広く公開していくことであったのです。こうした考え方から、「総合的人材ニーズ調査」については、日本商工会議所やリクルートの協力を得て作業を急ぎ、年度内に結果を取りまとめ、広くインターネットを通じて公開したのでした。
人材情報インフラとしての
活用を期待
こうして作成された「総合的人材ニーズ調査」は、労働市場というジャングルの、いわば水先案内人です。地方公共団体や人材ビジネスに携わる方々にとっては、どういう地域、業種に求人やビジネスチャンスがあるかを知ることができますし、個人にとっては、自らのキャリアパスを切り開いていく際に進むべき方向を指し示すコンパスの役割を果たしてくれます。
特に、今回の調査では、
1)市場実態を踏まえて職種・業種分類を見直し、ホワイトカラー分野を充実させたこと
2)全国で100以上の通勤圏を設定し、人材需要の構造を地域レベルで把握したこと
など、新しい試みを取り入れました。これまで標準とされてきた職業分類などが、近年の大きな産業構造の変化に伴い時代遅れになっている恐れがあったため、市場の実態をできる限り反映させるよう努めたのです。
今後、この調査が我が国の人材情報インフラとして広く利用されるとともに、本調査の基本フレームがベースとなって、人材情報の整備が飛躍的に進展することを期待しています。
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『Works No.40 戦略的HRMを生み出す「人材ポートフォリオ」』 (2000年6月発行)掲載
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