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日産自動車が10月18日に発表した経営再建計画「リバイバルプラン」が、政府、経営者、労働組合に大きな波紋を投げかけた。計画の柱は、向こう3年間でグループ全体の14%に当たる2万1000人の人員削減と5工場の順次閉鎖。この大規模なリストラ計画は、日産グループの社員だけでなく系列・下請けの労働者や地域経済にも大きな影響を及ぼすことが予想されるため、政府は急遽日産に対し、雇用不安を拡大させないよう指導を行った。
また、金融再編に伴うメガバンクの出現で話題となっている興銀・富士・第一勧銀連合、住友・さくらの財閥連合についても、早晩大規模な人員削減を伴うリストラ計画が発表されるにちがいない。今、日本のリーディングカンパニーが産業再生に向けて一斉に本格的なリストラに取り掛かっている。
このように相次いで発表された企業再編やリストラ計画には大幅な人員削減が含まれていることから、連合と日経連は10月22日、共同で「雇用安定宣言」を発表した。宣言ではまず、「国民的な緊急課題」となっている雇用維持・安定に向けて、労使は「最大限の努力を傾注し、それぞれの社会的役割を果たしていく」ことを確認。そのうえで、経済のグローバル化のなかで企業は構造改革を迫られているものの、「安易な雇用調整は慎まなければならない」と強調した。やむを得ず雇用を削減しなければならない場合は、「その規模を最小限にとどめるとともに、関連企業、地域経済などへの影響に十分配慮する」よう求めている。
また、財団法人社会経済生産性本部の「雇用政策特別委員会」も10月に、厳しさを増す雇用問題を改善するため、緊急提言を発表している。提言では、(1)雇用の創出と安定に向けた労使協議、(2)求職者相互の人的つながりを重視した再チャレンジを可能にする仕組みづくりを提案している。
このように厳しい雇用情勢を踏まえて産業界、労働界から各種提言がなされている。
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一方、11月にリクルートが発表した10月の求人広告件数は、対前年比で+13.9%の伸び。前月の+13.1%を上回り、3カ月連続でプラスとなった。また、3カ月移動平均では、+11.3%となり、企業の求人意欲は順調な回復ぶりを示すものとなっている。
このように、求人誌から見ると雇用環境に薄日がさしてきたかのようにも見えるが、現実は大企業を中心に本格的なリストラが継続し、同時に元気な中堅企業、IT業界などの中途採用意欲が回復してきている状態だ。これは明らかに従来の景気循環に伴う失業状態と異なり、構造的なミスマッチの拡大による影響が大きいと考えられる。
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構造的失業を解決するには時間が必要だ。求人と求職側には職業能力のミスマッチがあり、このミスマッチはそう簡単には解消できない。単なる求人需要の減少であれば、雇用拡大となる各種施策が効果を発揮するのだが……。
政府は緊急雇用対策として、直接雇用も含め100万人規模の雇用創出を考えているが、なかなか妙案がないのが実情だろう。最近実施した「緊急地域就職促進プロジェクト」についても効果のほどは疑わしい。全国の公共職業安定所を通じて中高年の雇用を促しているが、計画どおりには進んでいない(一部現場では予算消化のため、効果がはっきりしない事業を実施している)。急場しのぎの対策としては、雇用維持のための雇用調整助成金や雇い入れ企業への交付金は効果があるものの、構造的な失業問題を解決するうえでは、かえって改革を遅らせている面も否定できない。
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失業保険から雇用保険と名称が変わって内容の見直しが行われたのは、今から25年前の1974年。その間の環境変化に比べ、今日までの変化は遥かに大きいだろう。
雇用保険は生存権・労働権・職業選択を保障するものとして存在するわけであるが、この際これをゼロベースで考え直してみてはいかがだろう。雇用保険の主目的が、雇用を失った、つまり失業した人を救済するためのセーフティネットの整備であったとすれば、もはやその意味は失われている。なぜならば、雇用を守るにも、その前に企業が倒産してしまうことも珍しくなくなったからである。守るべき雇用も、企業は永遠に存在するということが前提である。また、職業選択の保障についても、企業の雇用形態や採用行動が大きく変化しているなかで、その有効性の見直しが必要だろう。とりわけ、労働権、職業選択については新しい時代認識に立っての制度のリストラクチャリングが不可欠ではないか。
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21世紀の社会変化を一言で言えば、ダイバーシティとモビリティ。両者とも日本社会では今まで受け入れにくかった面がある。この環境変化のもとで、21世紀に求められる基本コンセプトは、「個人のキャリア形成を保証する社会」の仕組みづくり。つまり倒産などで会社が失われても、個人のキャリアは保証され、再雇用あるいは独立などエンプロイアビリティが確保されること。社会の変化のスピードがますます速まり、自己責任がより求められる社会で、自分に最もふさわしいスキル・知識を身につけ、これによって収入を得るための仕組みづくりでもある。
ここで重要なのは、この仕組みは社会福祉的発想ではなく、より積極的な意味で人材活用を強化する社会インフラづくりであり、人材立国日本を目指すうえで不可欠な社会システムという認識である。したがって、この仕組みは法律によって一律に定めるのではなく、民間の創意工夫、市場メカニズムなどを最大限に活用する必要がある。民間の生命保険・年金サービス、教育サービス、職業紹介サービス、家計診断サービス等、対個人サービスを統合化して新しい機能を担う新たなサービス業の創造と考えることもできる。つまり、一人一人が持って生まれた資質、多様性と経済社会が求めるダイナミックな職業能力を的確に結びつける機能である。これはあくまでもビジネスとして取り組むべきである。というのは市場原理を徹底することによってのみ、社会的な人材の適材適所が実現するように思えるからだ。
今世紀末からのデジタル革命によって、ヒト、モノ、カネの経営資源のなかで、モノとカネの適材適所が飛躍的にスピードアップし、企業活動そして企業競争力を根底から変える動きとなった。21世紀、日本の課題は日本最大の経営資源である“ヒト、人材”の極大化をいかに図るかといっても過言ではない。ただし実現に向けては、企業の情報開示の徹底、税制、社会保障制度の全面的な見直しなど同時に解決すべき課題も多い。
以上、キャリア保険サービスとは一人一人異なる個性、価値観をいかに効率的に社会(企業)の複雑なニーズとマッチングさせるかの社会的インフラづくりへのチャレンジである。なお社会的なセーフティネットは別途整備することは言うまでもない。
(かくほう・まさゆき)
リクルート版労働白書“works report 97、98”の編集プロジェクトで主査を務める。「2000―2010年の労働力需給予測研究」「大学生の企業イメージ調査」など雇用・労働分野の調査を担当。「経済審議会、雇用・労働ワーキンググループ」、通産省「産業労働問題研究会」「アントレプレナー教育研究会」等に委員として参加。専攻は社会工学。 |
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『Works No.37 "雇用創出"その時企業は…』 (1999年12月発行)掲載
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