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リクルートワークス研究所
 

セッション4●雇用政策

雇用保障からキャリア保障へ 発想の転換を

リクルートリサーチ取締役
角方正幸


1999 年 4月 10 日

短期・長期の視点

 雇用政策を考えるうえで大切なことは、それが短期的な成果を求めるものなのか長期的なものであるかの視点である 雇用政策はそもそも社会政策の一環であることから、総合的かつ複合的側面が大きく、他の政策と複雑にからんでいる。 その結果として、短期的には長期的目的に相反する施策が必要なケースも生じてくる。
したがって、雇用政策の検討にあたっては、各施策の手順や達成期限などを明確にする必要がある。さらに労働力需給の 迫状況、つまり景気の動向に政策が左右される面が強い。これは労働需要が、あくまでも生産活動から生じる派生需要の面をもっているからである。長期的には急激な少子・高齢化に伴う人口の減少が労働力不足を招くのではと考えられるが、現状では労働力の過剰が社会問題化している。
 以上を理解したうえで、21世紀の雇用政策のあり方を考えてみよう。まず、長期的には旧来型雇用システムを「モザイク型社会(モビリティモデル)」へいかにスムーズに転換させるか、 そのために必要な施策・制度の見直しや新たな整備を検討することが本研究のメインテーマとなろう。しかしながら、21世紀の入り口に直面して、戦後最悪の失業率など、経済活動の機能不全に伴う雇用環境の悪化が懸念される現状では、労働需要の拡大が最も重要な政策課題となってきている。 つまり雇用創出をいかに行うかである。この点については最優先の研究テーマの一つと考えたい。



「モザイク型社会」実現への3つの条件

「モザイク型社会」の実現にあたっては、

(1) 真の労働市場の形成、
(2) 一元的価値観の是正、
(3) 明確な評価手法の確立

――が不可欠であることを述べた(『works report '97 』 P68〜71)。この3つの条件をもとに、雇用政策の基本的な視点を確認してみたい。

(1) については、まず官の果たす役割を見直す必要がある。労働・雇用問題は本来政府の専管事項であるという価値観が根強く、市場メカニズムや民間セクターを活用していく考えは受け入れにくかった。しかし、これからの政府の役割は、プレイヤーになることではなく、競争メカニズムを機能させるインフラ整備に特化すべきである。別の見方をすれば、失業を出さないことを目的にした「事前対応型雇用政策」から、市場原理にゆだねたあとの事後チェック政策、「監視機能」にシフトすることでもある。
 また、新たな市場メカニズムの導入にあたっては、市場における失敗を担保する仕組み(セーフティネット)も同時に整備されなければならない。

(2) は多様な働き方を肯定する社会風土の醸成である。独創的であることが肯定され、称賛される社会を構築することが、モザイク型社会実現のカギといえる。これは学校教育のみならず、家庭や職場、地域での日常的な活動から形成されてくるものであろう。

(3) はモザイク型社会が機能するための必要条件で、個人の多彩な能力やスキルを正確に評価し、マネジメントしていく手法が開発されていることである。この部分については、特に民間分野での試行錯誤や研究開発が望まれる。

発想の転換を―雇用保障からキャリア保障へ―

 以上を念頭において今後の研究テーマを考えていきたいが、雇用政策の基本的なスタンスは雇用の維持よりは個人のキャリアを保障する社会の仕組み作りと言えよう。具体的には、以下のテーマが挙げられる。


●『雇用創出のための具体的方法論』
独立支援、税制優遇といった観点から雇用創出の仕組みを検討(起業、インディペンデントコントラクター、NPOなどへのサポート機能の研究)。
政府による海外企業の国内誘致も視野に入れた新産業育成による雇用創出のための方法論を検討。
●『雇用保険に代わる新たな「キャリア保険」制度』
(モザイク型社会におけるセーフティネットのあり方を研究)
個人のキャリア形成を保障する社会の仕組み、必要な機能の研究。設計に当たっては単なる福祉政策ではなく、民間の保険サービス、教育サービスなど市場機能を最大限活用する施策の検討。
●『個人の自立と自己責任を前提とした法制・税制』
サラリーマンの源泉徴収制度の見直し、退職金税制、副業禁止規定の見直し、企業年金法の再設計等個人の自立に関連する各種制度の見直しと再設計。
●『21世紀の労働環境や社会生活に関する長期展望』
長期的な視野から、ライフステージによって変わる働き方や価値観と調和がとれる社会全体のしくみについて研究。

『Works No.33 日本的雇用システムの未来デザイン』 (1999年4月発行)掲載

 
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