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 Works Big対談 楠田丘氏 VS 小池和男氏
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リクルートワークス研究所
あの2人が、「日本型経営」を振り返った! 職能資格制度構築の立役者 楠田丘氏 日本企業の知的熟練を説く 小池和男氏 Big対談
「日本の人事、失敗の本質」と題し、戦後人事史をひもといた『ワークス』55号。テーマが多岐にわたり、消化不良気味の読者も多かったかと思われる。そこで、日本企業研究の"教祖"たる2人にリリーフ役をお願いし、日本型人事の粋を解き明かしてもらうことにした。かたや、「職能資格制度」を提唱し、コンサルタントとして日本中に広めた楠田丘氏。こなた、「知的熟練」という概念で、日本企業の強さを解明してきた研究者、小池和男氏。
近い世界にいながら対談は初めてとなる2人による、「Works Big対談」を2月3日、東京の霞が関ビルで催した。1時間を超えた論戦のうち、成果主義や社員の目標設定に関する部分を中心にお伝えする。

ワークス研究所 五嶋正風

対談では人事コンサルタントの中嶋哲夫氏が司会を務めた。また、楠田、小池両氏を良く知る石田光男・同志社大学教授もインキュベーターとして参加した。
1年間で業績評価は「大人げない」
短期で評価を下す成果主義については、楠田、小池両氏とも厳しい見方を示した。楠田氏はアメリカ型の成果主義が、1年など短い期間で評価する考え方であることについて、「1年が終わった段階で、業績は低かった、高かったと、賃金を決めるというのは大人げない。そんな成果主義は、日本企業をかえってだめにする」と説いた。
成果主義のメリットとしては、定期昇給はなく、賃金を下げることが可能なため、人件費が抑制できることを挙げた。一方で短期的な評価は、
・目先のことだけを考え、落ち着いて仕事をしなくなる。
・連帯感が失われる。
・人を手伝おうという気がなくなる。
・しっかり自分を磨こうという気がなくなる。
などの弊害を生むことを指摘した。それらを防ぐには、例えば10年間など長期にわたる成果を評価することだと主張。「最近の人事部長は賃金にメリハリをつけるという。メリは下げること、ハリは上げることだが、長い目で見ると人はみんなハリだ。社員を見つめ信じて、メリハリではなくハリハリでいくのが本当の成果主義だと思う」と会場の笑いを誘った。
米企業の職務や賃金制度への「誤解がある」
小池氏も成果を評価する期間について言及した。プロフェッショナルなホワイトカラーが担うべき、込み入った面倒な仕事ほど、短期では成果が出にくいことに触れ、「中長期の業績や競争も視野に入れると、成果主義はかえって高くつくかもしれない」と述べた。
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また小池氏はアメリカ企業の職務や賃金制度への誤解があることを指摘した。教科書には「アメリカでは仕事に人がつく。仕事は職務定義書(JD=Job Description)で決まる」とあるが、大卒ホワイトカラーで非定型職務が増えてくると、JDの表現は曖昧なものになる。その結果、査定も「エバリュエーター(JDに従い、機械的に評価をつける役職)が基準に従って絶対評価をする」ということはなく、直属上司が主観で評価しており、「日本に似ている」と説明した。
「イギリスの課長に定昇ある」と驚き
賃金制度についても、米国の典型的な企業の経理部門を例に、縦軸に賃金、横軸に職務階層をとった図(※図1)をもとに説明した。職務に応じて給与が決まるなら、職務階層ごとに単一給であるはずが、実際は同一階層でも幅があることを示した。こうした幅は、1回ごとの洗い替えではなく、毎回の査定評価の積み上げによる結果で、「定期昇給に近い形。
証券トレーダーのような職種や、役員、事業部長クラス以上では成果配分も見られるが、課長まではほとんどがこういった形だ」と話した。さらに同一階層に滞留を続ける年長者と、上位階層に移ったばかりの者では、前者の方が高賃金になる場合があることも説明。「まさに年功給そのもの」と論じた。
課長以上は定期昇給がないというトヨタ自動車社員が英国に派遣され、「イギリスの課長には定昇があったので驚いた」というエピソードも紹介。「年功制、定期昇給といったものは、今や事実上グローバルスタンダードに近い。これを利用しないのは損」と説いた。
図
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徹底的な目標設定で社員を絶対評価すべし――楠田氏
目標の設定や評価の方法については、両氏の主張に違いが見られた。楠田氏は、社員は相対評価でなく、絶対評価をすべきだと強調。子どもへの接し方を例に「長男はよくて、二男はだめとはいわないはず。長男はここが優れているが、ここが足りない、二男はここがだめで、ここは優れている、とみる。優れているところを伸ばしていくのが愛情でしょう」といい、「経営にとっていちばん大事なのは、社員に対する愛情だ」と説いた。目標設定についても、年度の初めに上司と部下との間で、徹底的に確認し合うことで、「ホワイトカラーであっても絶対評価は可能」と話した。
完璧な評価はありえない。補強装置の工夫を――小池氏
これに対し、小池氏は判定をめぐって外交問題にまで発展するようなフィギュアスケートを例に、「選び抜かれた元名選手が、大人数で評価をしても国際問題になってしまう。つまり完全な、こうすればうまく評価ができるとか、うまく判定できるという仕組みはまずない」と主張。「完全な方法はないという前提で、評価の補強装置を工夫するしかない。例えば、査定する上司と部下、それぞれが3年に1度異動すれば、1年半くらいの間隔で上司か部下が入れ替わることになる。すると数年間で、複数の評価情報が蓄積される。それを社内で共有することが補強装置として考えられる」と述べた。
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最後に人事担当者、労働問題研究者へのメッセージが2人から送られた。小池氏は「世の中には分からないことが必ずあるのだから、それを分かったかのごとき装いを持つものは疑った方がいい」。楠田氏は「枝や花は、根や幹が張って、初めてなるもの。今後アメリカ的な成果主義を入れるにしても、根幹をお忘れなく。つまり、能力主義を土台に置きながら、成果主義を入れていっていただきたい」と締めくくった。
プロフィール

楠田 丘 (くすだ・きゅう)

社会経済生産性本部 雇用システム研究センター所長。1923年生まれ。48年九州大学理学部卒業後、労働省(当時)入省、統計業務指導官などを歴任。日本生産性本部主任研究員を経て、94年から現職。75年以降、ほとんどの大企業が採用した職能資格制度構築の立役者で、その理論は「楠田式」と呼ばれる。主著『生産性と賃金』(日本生産性本部)。

小池 和男 (こいけ・かずお)

東海学園大学経営学部教授。1932年生まれ。東京大学大学院応用経済学博士課程修了。名古屋大学経済学部教授、法政大学経営学部教授を経て現職。国内外にわたる実証研究をもとに「終身雇用」「年功序列」といった日本的雇用慣行の「通説」に疑問を投げかけ、「知的熟練」という言葉で日本的経営の先進性を示した。主著『日本の賃金交渉』(東京大学出版会)、『日本の雇用システム』(東洋経済新報社)。
(2003年2月24日掲載)
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