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1万店を実現するためには、新たな店舗マネジメントが必要なんです。

日本マクドナルド株式会社 上席執行役員 人事本部長 新井昭彦氏


7月26日、初値は予想を上回り、4700円を付けた。久々の大型企業の株式公開に、市場は注目した。銀座への第一号店出店から30年、ハンバーガーという存在の社会的地位を高めただけではなく、ファーストフードという文化を日本に植え付けたといっても過言ではない日本マクドナルド。その株式市場デビューは、低迷を続けるマーケットにおける数少ない好材料となった。さてしかし、こうした評価は何によってもたらされたのか。これだけの実績を生み出す源泉とは何だったのか。ハンバーガー・チェーンというシンプルなビジネスモデルをここまでの存在に成し得たのは、どのようなマネジメントがあったからなのか。そして、近未来に向けて、そのマネジメントはどのような変化を遂げていくのだろうか。今回のインタビューでは、こうした側面にスポットを当て、同社の創生期より人材マネジメントの基盤を作り、実践を重ねてこられた新井氏に、「人と組織」の観点から語っていただいた。なお、インタビューは、株式公開前日の7月25日に行われた。

Works編集長
豊田義博


2001 年 8月 15 日



ビジョンの浸透が成長の源泉

――株式公開、おめでとうございます。多くの方々が、明日の株式公開を注目されていると思います。そこで今日のインタビューは、新井さんに創業してから今日までを振り返って頂きたいのです。30年の成長の軌跡の概略は、多くの方々がご存知だと思うんですが、それを演出してきた人事のシステム・・・・・・新井さんが長く人事に携わられて、今日のマクドナルドの成長の源泉になったような施策を打たれて、その結果が今あるんだと思うんです。
 振り返っていただいて、象徴的な、あるいは効果のあった施策などを、2、3挙げて頂くことから始めたいのですが。


新井 何と言っても、やっぱり経営者ですよね。藤田田抜きにしては語れない。彼の理想、ロマン、チャレンジ、それを社員がまた共有できた、社長がそれを共有させたというリーダーシップ、まずはこれですね。やっぱりロマンだと思いますね。まずはこのビジョンというのがやっぱりベースにあったということじゃないかと思います。
 で、それを脈々と、全階層に渡って受け継いできた、それが一つのカルチャーになっていると。その目線の高さを常に維持していくことには、私も腐心しました。それは採用から始まってね。当時、何でフードサービスで大卒なんか要るんやと。

――最初から、全部そうですよね。

新井 とにかくトップだと。前に先輩もいない、だれもいない、自分たちで創っていくんだと。いいフィールドですよね。2番手、3番手で1番を追うんじゃなく、自分たちが創っていくんだ、われわれが見本だと。そういうものをずっと培ってきて、それを失わないようにやってこれたというところは、大きかったと思います。

――藤田社長は類稀なる経営者であったでしょうが、多くの場合、創業者は、創業時に、ある種の高邁な理念とかビジョンとかをもっていると思うんです。しかし、往々にして、それ自身が変質してしまったり雲散霧消してしまったり、あるいはそれがきちっと組織に根づかずに、大きくなればなるほど浸透しづらくなるという部分がある、ビジョンとはそういう類のものだと思うんです。
 御社の場合は、ボトムの部分を含めて、きちっと同じ言葉で伝達されていて、それが非常にいい形で浸透していると感じます。
 これはすごく難しいことだと思うんです。御社を見ていると、簡単にできているようですが、これだけの規模で実現なさっているというのは、実は驚異的なことではないかと思うんです。ビジョンの浸透がなかなかできずに困っている企業が多々あるわけで。この成功の要因は何だったのでしょう?


新井 私が推進してきた方向性というかキーワードは三つあって。一つは、プライドなんです。我々が・・・・・・社長だけじゃない、社員全員が新しいビジネス、フードビジネスを創っていくんだと、創っていっているんだと。プライドを高くもつことによって、いい仕事、高い水準をもてるということですね。
 二つ目は、やはり待遇処遇。就業規則に「日本最高の給料水準に達することを会社目標にする」って書いてあるんです。労基署へ届けに行ったら、「何や、これは」と言われてね(笑)。書いちゃいけないというルールはないから、突っ返しはされはしないけど、これは馴染まないなと、就業規則には(笑)。まあ、日本最高は実現していないですが、かなり投資はしているわけです。
 もう一つは、やはり権限委譲だと思うんですね。口先だけの店舗第1主義じゃなくて、とにかく店舗に任せていくことを徹底したのが、大きなビジョンを掲げて、それを継続できる要素じゃないかと思います。
 それをバックボーンで支えているのが、トレーニングシステムです。ハンバーガー大学・・・・・・これにきっちり金掛けて、投資して。同じことばっかりやってるといって、人によっては、金太郎飴をつくると言われるけど、金太郎飴大いに結構。コンピテンシーの考え方は、優秀なパフォーマーの行動を抜き出して、それを真似しなさいでしょ。そのコンピテンシーに到達したら、皆、金太郎飴ですよ。だから金太郎飴ね、大いに結構と思いますよ。

――確かにコンピテンシーはそうですね(笑)。


設立以前からあった「ハンバーガー大学」


――ハンバーガー大学は発足して、もう何年になるんでしょうか? 設立当初からあったわけですか?

新井 有名な話なんですが、会社設立は1971年の5月1日だけれど、その前から、ハンバーガー大学というのは創ってあって、それから法人設立なんですね。

――そうなんですか?

新井 そうなんです。時期的には大した差はないですが、トレーニングが最初から重要な戦術として組み込まれていたということです。

――今でこそ、コーポレートユニバーシィティのような存在が普及しつつありますけれども、当時の日本では極めて異質な存在として注目されたかと思います。

新井 元々はアメリカのマクドナルドシステムが、日本より15年前より稼動していた。彼らはフランチャイズビジネスでやっていますから、当然、しっかりしたトレーニングがないと。マーケットと接しているわけだから、それは当然そうですね。その流れを基本的には汲んでいるんです。
 同じお金を掛けるのでも、商品開発とか何かじゃなくて、あくまで人材投資に。サービス業だから当然ですよ。顧客満足度向上はトレーニング次第ですから。

――今、日本マクドナルドのカスタマー・サティスファクションは、米国の比ではないぐらいに高くなっていると思うんです。日本のハンバーガー大学の中でオリジナルのコンテンツが、どんどん、できていったんでしょうか?

新井 いいえ。

――そうではない?

新井 これはわれわれの憲法みたいなもんでね、「QSC」という言葉があるんですよ。Qはクォリティ、Sはサービス、Cはクリンリネス。今は最後にプラスバリューね。「QSC+V」というキーワードは、発足当時から何ら変わってないんです。社長も何かあると、すぐ「QSC」と言うわけです、全店長を集めてね。
 それを軸にして、トレーニングをやっているわけです。QSCを維持、向上していれば、お客様は必ずリピートするんだと。
 マーケット戦略としては非常に単純ですよ。まず最初に来店してもらうこと。これはマーケティングの仕事だと。でも2回目に来てもらうのは、店舗の仕事。それにはQSCをきちんとする、「来て良かった」というバリュー感を生み出すのは、一つ一つの店舗がやる仕事だと。そうすれば必ずリピートするからという、極めて単純な構造です。
 じゃ、そのQSCをやるためにはどうするか。言葉は簡単だけれども、それを店長に教え込んで、店長が最終的にはアルバイトに教え込んで、アルバイトがお客さんとインターフェースを取ってやるということですね。高邁なものでも何でもないですよ。


アルバイト活用という「人材インフラ」の構築

新井 人事システムという面では、今でこそ普通だけれど、アルバイト・・・・・・非正社員ですね、をベースにして事業を構築してきていると。事業といっても1店舗、1店舗の集まりだけども、その一つ一つを彼らに任せていくという割り切りに、何の衒いもなかったということ。
 当時、アルバイトを使ってビジネスが成り立つのかという声もたくさんあったけど、はっきりと、アルバイトの戦力化に視点を置いて、それをベースにしたビジネス構築、店舗運営を最初からしてきた。今、中間管理職も含めて、アルバイトの経験をしている人が3割以上いますよ。人事部長もそうです、人材開発部長も、アルバイト経験者ですから。

――屈強な人材インフラになってらっしゃいますね。

新井 30年前から始まって、ごく限られた正社員、その他はアルバイトという、当時の世の中の雇用構造と全く異なるフォーメーションを組んで、100%そういう中でやった。アルバイトでやれるというのは、実は大きなノウハウだったわけです。10年ぐらいは、先行したメリットを十分受けさせていただいた(笑)。
 今ではそれを見て多くの業態が導入していますよね。ユニクロさんは、もっと進んだ形でやられている。ユニクロさんは、ご存知の通り、われわれのシステムを、ハンバーガーを服に替えてやっておられるけど。

――事業を発足させる段階で、アルバイトの人間を活用していこうというのは、最初に意志決定されていたわけですか?

新井 最初にあったんですね。全部正社員じゃなくて、最初からアルバイトを使ってやっていく。アメリカもそうやってたわけですが。名前をクルーと呼んでいる訳ですが、一つのお店は船で、さまざまなクルーがオールを漕がないと、前には進まない、という考え方、コンセプトは最初からあったわけです。比率はどんどん変わってきて、正社員の比率が人件費から見ても、投入時間量からいっても少なくなってきて、アルバイトのほうがどんどん増えてきています。

――日本のフリーターマーケットを創りだしたのは、御社の功績が大きいんじゃないかと思いますね。

新井 入社した時に、大変驚いたんですよ。アルバイトの人が、なぜこんなに働くのかと。今でも皆さん言うわけですね、「あの人がアルバイト?」というぐらい。その時に、一つの人間発見があったわけです、「なるほど、モティベートということは、こういうことなのか」と。人間は肩書きとか表層的なものではなく、目標を持って動機づけをすればきちんと本当に働いてくれるんだ。巧いところにマクドナルドは目をつけてるなと。

――何なのでしょう、アルバイトを惹きつけているのは?

新井 さっき言った権限委譲でしょうね。「やってはいけない」という管理を極力排除しているんです。「やりたいんなら、やっていいよ」と。社員の仕事とアルバイトの仕事の区分けが、昔はあったんです。しかし、「やりたい」という声にどんどん応えてきた。社員の許可を得ないで何かできるようにしていくということは、すごくリスクはありましたが。

――そうでしょうね。多くの企業が、正社員以外の雇用を考えながら、そうしたリスクテイクが出来ずに、責任ある業務を任せられずにいます。

新井 ほとんど任せる。やりたいという人には「じゃ、やってみなさい」と。

――「やってはいけない」というやり方をしないとおっしゃいましたが、それは何か明文化されているのですか?

新井 いいえ、そこは店長の能力です。

――そうしたことは、ハンバーガー大学の中でベースを身につけるわけですね。で、あとは本人の裁量の中で、いかに彼らを活かせるか・・・・・・

新井 そういうことです。個々の労務管理、人事管理は、当然のことながら本社でできるわけないし、それは店長が一任されることですから。今後の経営を考えたら、もっともっと、アルバイトの人に権限を委譲していきたいんです。アルバイトの中でも1番上のクラスになると、もう金庫のキーも店のキーも全部預けているところもある。ですが、彼らに対するトレーニングは整備されていなかった。急遽ということで、今、彼らに対するトレーニングをやっています。専門のトレーナーを20人ぐらいつけて、2年間ぐらいで1万人のアルバイトを再教育していく。

――今おっしゃったのは、スウィングマネージャーといわれるアルバイトの上級職の育成システムですね?

新井 スウィングマネージャーの中を、さらに3つに区分していまして、その最上位職を対象としたものです。今1番大きなエネルギーを費やしているところですね。


壮大な「人材育成システム」としての日本マクドナルド

――確かに日本マクドナルドは、ハンバーガーのチェーンシステムの企業なんでしょうけども、どうなんでしょう、それはたまたまハンバーガーであっただけかもしれないと言えないでしょうか。人をモティベートして活性化させて、これだけの大きな規模のものをつくりあげていくという、そのノウハウがすさまじいのであって、乱暴に言えば、マクドナルドのハンバーガーじゃなかったとしても、成功していたのかもしれない。

新井 うちの社員の中でも、そういう言い方をする人はいますね。採用部門でね、そういうふうに学生に説明しているスタッフもいます。そういう言い方もあるかもしれないとは思います。

――そういう意味では、本当の意味で人をマネジメントする力がつく組織なんでしょうし、それを、すごく大切になさっているんでしょうね。
 元々、ハンバーガー大学みたいな人材に対する投資を最初からやっていたし、今も新井さんの言葉から出てくるのは、人材に対するある種の開発とか教育とか。まさにそういう言葉のオンパレードです。御社の中で、とりわけ人事部門において、このことに関するプライオリティが極めて高いということを、改めて感じます。
 そういう人材開発のパフォーマンスを何らかの形で測定していく・・・・・・効果がどのように出て行るのか、という部分に関しては、ツールやメソッドみたいなものはお持ちになっているのですか?


新井 特にこれといったものはないです。ただ、ミクロの部分では、個人の評価はとても大切にしていますね、どの階層においても。今じゃどこも当たり前だけども、設立された当初から目標管理をやってました。目標設定をして、終わったあと、評価をして、面接をして、被評価者のサインをもらって、評価者のサインをして合意に至るということは、本社スタッフの中間管理職も、フィールドの管理職も・・・・・・管理職という言葉をうちは使わないけど・・・・・・、店舗においても、スウィングマネージャーに対してもずーっとやっていました。評価については、うるさいんですよ(笑)。

――最初からフィードバックシステムまで完全にあったんですね。

新井 あったんです、ちゃんと。

――でも、それが基本でしょうね、権限委譲を進める上では、なくてはならない仕組みなんでしょうね。サイクルで言うと、半年に1回ぐらいですか?

新井 今、社員はそうですね。アルバイトの人は3ヵ月に1回時給評価がありますから、原則、3ヵ月に1回やっています、基本です。


1万店時代の新たな店舗マネジメントシステム

――株式公開後、さらに成長してまた新しいステージを組織が迎えるということになると思うんです。そういう近未来を考えていった時に、ヒューマンリソースに関する新たな課題というか、新しいことへの取り組みとして必要になってくるとお感じになっているのはどのようなことでしょうか?

新井 今、1万店1兆円という目標を立てているわけです。できもしない話かもしれないけど、それが次のステップになっているんですね。で、もし1万店となったら、マネジメントスタイルは大きく変えざるを得ない。日本の国土を考えたら、同じエリアに5店舗、6店舗出てこざるをえないわけです、1万店といったら。そうすると、店舗は増える、お客様の質も変わってくる。一種の多様性ですよね。そうなった時に、ユニットという単位と、それから会社という組織の間に、一つのエリア組織みたいなものができる、必要になってくる。そうすると、一人ひとりの活躍の場も1店舗1店舗の権限委譲という問題じゃなくなって、もう少しスケールを大きくして、5店舗、6店舗、同じエリアで提供する必要が出てくると思っています。
 しかし、例えばアルバイトの人に組織を全部見ろというふうになってきた時に、これはシステムの面もいろいろあるけど、組織の評価ができるような仕組みや受け皿をつくっておくと、エンパワーメントがもっとできるんじゃないかなと。店舗ごとの評価じゃなくて、もう一つ羽根を広げて、エリアの評価をできるようになればいいなと思っているんです。
 1万店を目指す時、今の活力を風化させないために、どんな仕組みを作っていけるか、これは大きな課題です。

――クルーとして、いくつかの店を掛け持ちするような働き方も出てくるというような話ですか?

新井 いろんなパターンが出てくるだろうと思います。例えば、店舗は5、6店舗あるけど、社員は実は3、4人しかいないと。
 その時には、アルバイト、パートタイマー・・・・・・いろんな言い方があるけど、クルーの雇用形態も変わってくるんでしょうね。いろんな人が入ってくると思います、若い人だけじゃなくて。年齢とかキャリアとかの差がないカテゴリーになっていく。アルバイトといっても、昔で言う単純なものからどんどん変化してきている。いい言葉じゃないけど、非正社員の中身も、どんどん変わっていくんでしょうね。そういう多様な人が集まって、いろんな知恵をだしていく。望ましいのは、シニアの人も入ってくることですね。

――シニアの方々をクルーに、ということは、計画的にお考えになっていることですか?

新井 はい。会社として「クルーの何%を・・・・・・」というような話はないけれども、店長の判断でやっています。定着率はいいし、きちんと時間通り来てくれるし、安心してやってくれる人が、増えてきている。

――エリアやロケーションの特性によって、そういう方々のほうがはるかに集めやすいとか、お客様との相性がいいとか、そういう環境の違いもあるはずです。しかし、大きくなっていくことによって、オペレーションがよりシンプルになるんじゃなくて、より複雑にならざるを得ない訳ですね?

新井 そうですね。お客さんも多様化してくる、サービスを提供してくれているアルバイトの人も多様化してきている、ということでしょうね。

――本部スタッフのオフィスにもアルバイトを活用されているとのことですが。

新井 積極的に活用しようと言ったのは7、8年前です。店舗だってここまで権限委譲してやらしている、オフィスだってアルバイトにどんどん任せようというわけで。それ以降、急速に進みました。6年前にオフィス移転をしたのを契機に、アルバイトにも全員パソコンを持たせて。社内の情報にも殆どアクセスできるようにした。その時は社内でかなり論議があってね、「何でアルバイトに、そこまでオープンにして渡すんだ」と。でも、われわれは店舗でチャレンジしてきたじゃないか。何でオフィスでできないんだということで。

――本部の非正規雇用は、今後も増やしていく方針ですか?

新井 補充があったら、まずアルバイトですから。アルバイトではどうしてだめなの、ということで、正社員の補充はなるべくしない。

――人事部門はどうですか?

新井 アルバイトの人? 半分はアルバイトじゃないかな。半分も行かないか、でも、4割はそうでしょう。

――いろんな企業の方に聞かせたい話ですね、マックのアルバイト活用システムは店舗に限った話ではない、と。


組織評価と知的資本マネジメントの重要性

新井 組織と人というのは、表裏一体だと思うんですよね。人事をやっている上で考えなくてはならないのは、人だけの問題じゃなくて、必ず組織効率の問題もついてくる。組織というのは一つの骨格、骨ですよね、それに人という筋肉がついているわけですよ。で、実際何かアウトプットを出すのは筋肉ですよね、骨はじっとしているんだけど。それでも、骨格がしっかりしてないと、筋肉だっていい働きはできない。
人事評価をやっても、一般論の評価というテーマになった時も、やっぱり組織評価をどうするんだという話になる。組織の評価というのは非常に難しいわけです。個人が一生懸命頑張ってても、その組織の評価との、やっぱり掛け合わせになっていきますから。

――お店という単位で見た時には、個人の人数分以上のパフォーマンスが出る組織構造が、御社には確実にあると拝察します。新井さんがお感じになるのは、お店以外の部分を含めて、もう少し広い範囲で見た時に、もっとやり方がある、もっと変えるべきポイントもあるということでしょうか?

新井 いかに権限委譲がしやすく、それを評価しやすい仕組みを、シンプルで短い範囲の中で実現していくか。行く先は「自分たちで稼いでください」と、こういう形でしかないですよ、もう。それを実現しやすいような、人の成長と組織づくりをしたいと。
 ワークス研究所で注目している知的資本のフレームにある構造資本という中でね、データベースシステムとか知的所有権まで、業務プロセスというのが入ってますよね。で、私は個々のコアが発揮できやすい、いい組織を持つかどうかが、構造資本そのものだと思うんです。

――御社の構造資本、とりわけ業務プロセスの部分は、構造的に良くできているんではないかと思います。

新井 この表現、とても分かりやすいですよね。知的資本の基本的な構造。フィナンシャル・キャピタル以外の分野を明示して、数字に出ない、隠れたバックボーンに対するマネジメントの意識をもうちょっとしっかり持つということが、今後の企業の成長、組織の成長にとても必要だと思う。

――いくつかの企業で、知的資本を測定するプロジェクトを行ったんです。その時にいくつかの活用方法があるだろうという話が出ました。
 一つは、技術的に数値化をして、それを社内のコミュニケーションツールにしていく、、広い意味でのマネジメントツールにしようと期待しているパターンです。
 もう一つは、株主向けの情報公開。株主の多くは、目に見えるバランスシート、アセットしか結局見ることができないと。では、見えない部分をどのように公開していくか。これは、今後のIRのカギになるかもしれない、そんな意識でトライアルをされた企業もあります。


新井 今回の株式公開だって、予想以上の値がついているわけです。ブランドなんかの資産があって、大きく値がついたというんだけれども、これもまさしく…

――株主が見えない資産に注目したに違いないと思いますね。

新井 今後、株主が財務諸表を見る時に、やっぱり無形のものに評価がシフトして、財務的資本の影響力が弱くなるかもしれないですね。でも、それがあったおかげで、機関投資家の多くが3000円ぐらいしかつかないだろうと言っていたところが、4300ついたわけで(筆者注・・・・・・売出価格は4300円)。重要性を改めて実感しますよ。


2001年7月25日 西新宿・日本マクドナルド本社ビルにて

参考資料・・・マクドナルド・メッセ

参考資料・・・日本マクドナルドの投資家向けサイト

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